この記事は、さまざまな楽器向けに曲を編曲するガイドの一部です。
弾く人を決めて書く
最初の音符を書く前に、誰が弾く楽譜なのかを決めます。同じ初心者向けでも、始めたばかりの子どもと、大人になってから再開する人とでは、譜面の作り方が大きく変わります。先に弾く人を決めておくと、最初から最後まで一貫した書き方を選べます。
初心者向けに書く
初心者といっても幅があります。始めたばかりの子どもには、符頭の中に音名を入れたり、手を広げる幅を5度以内に収めたり、譜表を少し大きくしたりするとよいかもしれません。経験の少ない大人なら、もう少し複雑な譜面も読めることが多いでしょう。書き始める前に、次のことを考えてみてください。
- 符頭の中に音名が必要か
- 譜表サイズを標準より大きくするか
- フィンガリングの指定が役立つか
- コード記号を入れるか
- どのアーティキュレーションを記すか、あるいは記さないか
- 8分音符より短い音符も無理なく読めるか
- 片手で同時に何音まで弾けるか
- 両手の動きをどのくらい複雑にするか
- 無理なく届く音程はどのくらいか
- 歌詞を入れるか
どれにも一律の答えはありません。弾く人を具体的に思い浮かべながら選びます。
中級者向けに書く
中級者向けになると、考えることも変わります。初心者と中級者の境界は人によって判断が分かれます。呼び方よりも、譜面にどんな要素を入れるかを考えてみてください。リズムを複雑にしたり、表情を付けるためにペダルを使ったり、装飾音を入れたり、コードを詳しく記したりします。そうした要素が増えるにつれて、曲のレベルも変わります。演奏歴の長さより、譜面の内容でレベルを考えます。
歌詞を入れる
歌詞があると、初心者は楽譜に書かれた音と知っている曲を結びつけやすくなります。どこを弾いているか分からなくなったときも、歌詞が目印になります。ピアノソロの楽譜では、2つの譜表の間に歌詞を書きます。
複数のバースがある曲では、譜表の間に載せる歌詞を2行程度に抑えます。それ以上になると譜表が離れすぎて読みにくくなります。残りのバースは曲の最後に載せられます。


歌詞を書くときは、次のように記します。
- 1つの音節を複数の音符にまたがって歌うときは、その音符の上にスラーを付けます
- 単語内の音節をハイフンで区切ります
- 音節や単語の最後の音節が複数の音符に続くときは、歌詞の延長線を使います。このように1つの音節を複数の音符にまたがって歌うことをメリスマと呼びます
サスティンペダルの記号
ピアノ曲には、サスティンペダルで音を豊かにつなぐ曲もあれば、押さえている音だけを響かせる曲もあります。ペダルをどう使い、どこで切り替えるかによって、記号の書き方を選びます。
ペダルの仕組みを学んでいる初心者には、細かな記号が特に役立ちます。経験のある人は踏み替えるタイミングを自然に感じ取れることが多い一方、経験の少ない人には、踏む位置と離す位置をはっきり示すと伝わります。


経験のある人には、細かな記号より文字による指示のほうが合うこともあります。よくある書き方では、最初の組段(上下の譜表をまとめた1段)にはペダル記号を付けず、ペダルなしで弾くことを示します。2つ目の組段からコードの変わり目に合わせてペダルを入れ、3つ目の組段でも同じパターンを示します。その後は「Ped. sim.」と書き、同じように続けることを伝えます。パターンが伝われば、以降の譜面はすっきりします。

ペダルを指示する言葉には、次のようなものがあります。
- Con pedale: サスティンペダルを使う指示です。踏む位置は細かく指定しません。
- Senza pedale: ペダルを使わない指示です。ペダルを使っていた箇所の後や、スラーの付いたアルペジオを見てペダルを使うと受け取られそうな箇所で役立ちます。
- With pedal: ペダルを使うことを英語でそのまま表した指示です。近年の出版譜で使われることが増えています。
記譜ソフトで正確に再生するには、印刷したくない箇所にもペダル記号が必要になることがあります。その記号は最終的なレイアウトで非表示にしてください。
スラーの使い方
スラーはフレーズの区切り方を示したり、旋律の流れに目を向けてもらったりするために使います。むやみに付けると、譜面はすぐに見づらくなります。現代のピアノ演奏では、なめらかにつなぐレガートが基本です。なめらかに弾くことを示すために、パッセージ全体をスラーで覆う必要はありません。
曲を書き進めながら、それぞれのスラーが弾く人の役に立っているか、それとも譜面を見づらくしているだけか、ときどき確かめてみてください。フレーズの付け方が伝われば、その後は繰り返し記さなくてもよいことが多いです。
最後に
よいピアノの楽譜を書くのに、ピアノが上手である必要はありません。記譜をしっかり理解し、何が譜面を読みやすくするのかに目を配ることは、演奏技術だけに頼るより役立ちます。
好きな編曲の楽譜を調べてみてください。どこが読みやすく、どんな点が弾く人に合っているのかを確かめます。うまくいっているところと、そうでないところに気づいたら、一般的な原則と合わせて、自分の譜面作りに生かします。
よくある質問
ピアノの楽譜はどうやって書きますか?
まず、誰が弾く楽譜なのかを決めます。ピアノを始めたばかりの子ども向けと、大人になってから再開する人向けでは、譜面の作り方が大きく変わるからです。その人に合わせて、譜表サイズ、フィンガリング、アーティキュレーション、ペダル、歌詞の書き方を一貫させます。よいピアノの楽譜を書くのに、ピアノが上手である必要はありません。記譜をしっかり理解し、読みやすさに目を配ることのほうが役立ちます。
ピアノの楽譜に歌詞を入れるにはどうすればよいですか?
ピアノソロの楽譜では、歌詞を2つの譜表の間に書きます。歌詞は2行程度までに抑え、それ以上のバースは曲の最後に載せます。行数が増えると譜表の間が広がりすぎて、読みにくくなるからです。1つの音節を複数の音符にまたがって歌うときはスラーを付け、単語内の音節はハイフンで区切ります。音節が複数の音符に続くときは、歌詞の延長線を使います。
サスティンペダルの記号はどんなときに書きますか?
ペダルの仕組みを学んでいる初心者には、踏む位置と離す位置を細かく記すと役立ちます。経験のある人には、細かな記号よりもCon pedaleやPed. sim.のような文字による指示のほうが合うこともあります。記譜ソフトでは、印刷したくない箇所でも、正確に再生するためにペダル記号が必要になることがあります。その場合は、最終的なレイアウトで記号を非表示にします。