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音を楽譜にする採譜は、時代によって姿を変えてきました。使う道具も、できることの範囲も変わり、書き残した音楽に何を求めるかも変わってきたのです。
古代:初期の記譜法
現存する最古の楽譜は、古代の近東で作られたものです。現在のシリアにあるウガリットで見つかった、紀元前1400年ごろの楔形文字の粘土板に残っています。古代ギリシャでは、音の高さを文字で表す記譜法が発達しました。古代中国では、古琴などの楽器で、鳴る音ではなく指を置く位置を記す方法が生まれました。
それぞれの記譜法は、その土地の音楽文化に応じた役割を果たしていました。後の優れた方法にたどり着けなかった試みとして見ると、当時の使い方を見失います。その文化で実際に演奏されていた音楽のために使われていたもので、別の記譜法へ発展することを目指していたわけではありません。
何を記したかと同じくらい、何を記さなかったかにも、その特徴が表れます。ギリシャの記譜法ではリズムを指定しませんでした。音楽が詩や語りと深く結びついていて、その言葉自体にリズムの情報があったからです。古琴の楽譜は手や指の動きを記しました。古琴を弾くことには、演奏とともに心を静める意味があり、手の感覚も鳴る音と同じくらい重んじられていたのです。
中世ヨーロッパ:修道院のネウマと譜表
9世紀までには、ヨーロッパの修道院でネウマが使われるようになっていました。歌詞の上に置く記号で、正確な音の高さまでは示さず、旋律がどう上がり下がりするかを大まかに表しました。歌う曲を皆がすでに知っていて、足りない情報はそばにいる教師に教わる環境では、それで十分でした。主な役割は、耳で覚えた聖歌を修道士たちが思い出す手助けをすることでした。
1025年ごろ、グイード・ダレッツォは4本の線からなる譜表を導入しました。音の高さを、紙の上の決まった線に対応させる方法です。音節を使い、音と音の隔たりである音程を耳で覚える仕組みも取り入れました。当時は、まだ聴いたことのない曲を、周りにも知っている人がいない状況でどう教えるかが課題になっていました。ネウマが役立っていた修道院の、互いに身近な人から教わる環境が変わりつつあり、譜表はその変化に応えたのです。
18〜19世紀:専門の写譜者
長い間、楽譜を増やすには誰かが手で書き写す必要がありました。出版社は専門の写譜者を雇い、需要に応える速さでオーケストラの全パートを記した楽譜を複製していました。規模の大きな作品を1曲書き写すだけで何日もかかり、書き間違いも起きました。写譜の依頼が増えるにつれ、作業が追いつかなくなりました。
この仕組みは、いずれ別の方法に置き換わる、不十分なものとして語られることがあります。ただ、音楽史に残る丁寧な手書きの楽譜の中には、こうした写譜者が作ったものも数多くあります。写譜者は熟練した専門家として評価されていました。需要が伸び続け、写譜者だけでは対応しきれなくなったのです。
20世紀:録音、MIDI、楽譜作成ソフト
1877年に発明されたエジソンの蓄音機は、実際の演奏を初めて記録しました。演奏について書き残すことに加え、演奏そのものを残せるようになったのです。20世紀の大半を通して、録音と楽譜は別々の形式として共存しました。それぞれ用途があり、一方が他方に取って代わることはありませんでした。
1983年に規格化されたMIDIで、電子キーボードとコンピューターを直接つなげるようになりました。鍵盤を弾くと、コンピューターがその情報を受け取ります。演奏をオーディオとして残すだけでなく、編集できるデータとして初めて記録できるようになったのです。ただし、使えるのは電子楽器に限られていました。ピアノの録音や歌声、ギターの音を、そのままMIDIに入力することはできませんでした。
1980年代後半に登場した楽譜作成ソフトで、コンピューター上の楽譜作成や編集はずっと速くなりました。それでも、音符は一つひとつ自分で入力する必要がありました。録音から楽譜を作るには、まだ、音を聴き取る訓練を積んだ人の耳が欠かせませんでした。
AIによる自動採譜
オーディオから自動で採譜する研究は、1970年代から少しずつ進められていました。2012年以降、ディープラーニングが使われ始めると、進歩は一気に加速します。人が書いた規則に従う代わりに、大量のデータから学習するようになりました。どの楽器で、どの音が、いつ鳴ったのかを識別する精度が上がり、実用になる結果を出せるようになったのです。Googleが2018年に公開したモデルは、ピアノの録音で高い性能を示しました。ほどなく、この系統の研究を基にした商用ツールも登場しました。
現在のAI採譜は一般的なオーディオファイルを扱えるため、MIDIのように電子楽器に限られません。単一の楽器をシンプルに録音した音源なら、出力をそのまま使えることも多くあります。音数の多いアレンジや、強く加工した音では、確認や修正にもう少し手間がかかります。それでも、白紙から始めるより、AIが作った下書きから始めるほうが作業を進めやすくなります。現在の変換の仕組みは、オーディオをMIDIに変換するガイドで詳しく説明しています。
Songscriptionの役割
Songscriptionは、オーディオファイルを楽譜、MIDI、ギターのタブ譜、MusicXMLに変換するAI採譜ツールです。他のツールと実際の使い勝手を比べたいときは、主な選択肢を詳しく紹介したAI採譜ソフトの比較記事が参考になります。
これからの開発
今後の開発には、主に2つの方向があります。音楽制作ソフトとの連携を深めることと、演奏が終わってからではなく、演奏中にリアルタイムで採譜することです。明瞭な録音では、出力を少し直すだけで使える精度にすでに達しています。音数の多いアレンジや強く加工した音など、複雑な音源への対応にはまだ課題が残っていますが、その精度も上がり続けています。
おわりに
採譜には、時代ごとの状況に合わせて、さまざまな道具が使われてきました。それぞれに、その時代の必要や制約が表れています。修道院ではネウマで覚えた曲を思い出し、譜表が使われるようになると、歌い手は知らない曲も学べるようになりました。手書きの写譜は楽譜の出版や販売を支え、MIDIは電子楽器の演奏を記録しました。AIは録音からの採譜に使われ、その精度は今も上がっています。
どの時代にも共通するのは、音楽を書き記すと、必ず何かを省くことになるという点です。演奏には、強弱、タイミング、音の重なり方、曲の解釈があります。楽譜で手がかりは示せても、すべてを細かく定めることはできません。
AIを使って、より多くの人が録音から楽譜を作れるようになりました。録音から楽譜を作るには、かつては何年もの聴き取りの訓練と、まとまった作業時間が必要でした。今では数分で作れます。今も採譜の役に立つ聴き取りの力を伸ばしたいときは、初めての採譜ガイドから始められます。
よくある質問
採譜はどのような歴史をたどってきましたか?
時代ごとの状況に合わせて、さまざまな道具が生まれてきた歴史です。現代へ向かって一直線に進歩したものと考えるより、その違いに目を向けると理解しやすくなります。現存する最古の楽譜は古代の近東で作られました。中世ヨーロッパの修道院ではネウマが使われ、1025年ごろにグイード・ダレッツォが4本の線からなる譜表を導入しました。専門の写譜者が手で楽譜を複製する仕事も、何世紀にもわたって続きました。録音、MIDI、楽譜作成ソフト、そしてAIも、それぞれの時代の必要や制約に応えてきました。
AI採譜が実用になったのはいつですか?
オーディオから自動で採譜する研究は1970年代から続いていました。2012年以降、ディープラーニングが使われるようになると、進歩が一気に加速しました。人が書いた規則に従う代わりに、大量のデータから学習するようになり、実用になる結果を出せるようになったのです。Googleは2018年にピアノの録音で高い性能を示したモデルを公開し、その後、商用ツールも登場しました。
MIDIではなぜ生楽器の録音を採譜できなかったのですか?
1983年に規格化されたMIDIで、電子キーボードとコンピューターを直接つなげるようになりました。演奏をオーディオとして残すだけでなく、編集できるデータとして記録できたのです。ただし、使えるのは電子楽器に限られていました。ピアノの録音や歌声、ギターの音を、そのまま入力する仕組みではありません。現在のAI採譜は一般的なオーディオファイルを扱えるため、こうした音源からも採譜できます。
