この記事は、ピアノロールで曲を学ぶガイドの一部です。
ピアノロールと楽譜は、ピッチ、長さ、タイミングという同じ音楽の情報を、それぞれ違う目的に合わせて表示しています。楽譜は人が演奏しながら読むためのものです。ピアノロールでは、音符のピッチや長さを見て編集できます。どちらも役立つ形式で、曲を学ぶときに何を使うかは、やりたいことによって変わります。
それぞれに得意なことと使いにくいところがあります。音楽を仕事にしている人の多くは、目的に合わせて両方を使い分けています。
まずは簡単に
- 楽譜。 演奏のための標準的な形式です。何世紀にもわたって発展してきた記譜の決まりにより、読み方を学んだ人は演奏しながら楽譜を読めます。レパートリーを増やすとき、ほかの演奏者とやり取りするとき、演奏用の資料を作るときに向いています。
- ピアノロール。 編集に使われる標準的な形式です。縦軸にピッチ、横軸に時間を取ったグリッドに、音符をそのまま表示します。リズムを楽譜の表記に置き換えることはありません。間違いの修正やMIDIパートの打ち込み、楽譜では見つけにくいパターンの確認に向いています。
- 両方の使い分け。 音楽を仕事にしている人は、演奏には楽譜、編集にはピアノロールというように両方を使います。互いに補い合う形式で、それぞれに役割があります。
楽譜
五線譜は数百年かけて発展してきました。その記譜の決まりの多くには理由があります。譜表、音部記号、拍子記号、リズムのまとまり、強弱記号は、演奏のテンポで読める形を保ちながら、紙面にできるだけ多くの情報を収めるためのものです。ショパンの夜想曲を初見で弾くピアニストは、楽譜にある視覚的な手がかりをほぼすべて使っています。
得意なこと。 演奏には楽譜が向いています。フレーズの区切りやボイスリーディング、強弱の変化、フィンガリング、アーティキュレーションが書かれていて、演奏に直接生かせます。一緒に演奏する人たちに共通する言葉でもあります。ホルン奏者とピアニストが同じ楽譜を読めれば、曲について細かく話し合わなくても一緒に練習できます。合奏に対応できるのも楽譜だけです。いつ入り、いつ音を伸ばし、いつ弱めるかといった手がかりが役立ちます。
苦手なこと。 楽譜には、音楽をどう解釈したかが反映されます。リズムを読みやすく書くには、たとえば付点8分音符と16分音符にするか、スウィングする2つの音符にするか、タイでつないだ3連符にするかを選ばなければなりません。こうした記譜の決まりは便利ですが、録音で実際にどう演奏されたかは見えにくくなります。楽譜を読めるようになるまでには時間もかかります。初めて楽譜を見る人には、たくさんの記号とピアノの鍵盤がすぐには結びつきません。弾いてみたいと思っていても、そこで気後れすることがあります。
ピアノロール
ピアノロールは、横軸に時間、縦軸にピッチを取ったグリッドです。音符はそれぞれ長方形で表示されます。左側にはピアノの鍵盤があり、ミドル Cがどの高さにあるかも分かります。音符の長さは長方形の幅で表されるので、長い音ほど幅が広くなります。多くのDAWはMIDIの編集画面にピアノロールを使っています。Songscriptionのように、採譜結果の修正にピアノロールを使うツールもあります。
得意なこと。 音楽を楽譜の表記に置き換えず、何が起きているかをそのまま確認したいときに向いています。採譜の間違いを直す、シンセのパートを打ち込む、2つのテイクを比べる、繰り返すパターンを見つけるといった作業がしやすくなっています。音楽を表す形式の中でもとっつきやすいものです。表示が鍵盤と一対一で対応しているので、楽譜を見たことがなくても、何が起きているかをすぐに追えます。形式そのものについては、オーディオからピアノロールへの変換ガイドも参照してください。
苦手なこと。 ピアノロールは演奏しながら読むのが難しい形式です。楽譜にある、見慣れたリズムのまとまりやフレーズの区切りに沿った小節線を使わずに、ピッチとリズムを追わなければなりません。ほかの楽器の演奏者と共有できる記譜の決まりもありません。複数の楽器を使う編成にも対応しにくい形式です。合奏用のピアノロールを作ることは理論上できますが、実際には扱いきれません。ピッチと音の長さ以外の情報も抜け落ちます。強弱やアーティキュレーション、フィンガリング、ペダル、その他の表情に関わる記号の多くは、ベロシティーやCCデータといったMIDIの数値になるか、完全に消えてしまいます。
どちらを選ぶか
選ぶときは、次の4つを目安にしてください。
- 曲を演奏するなら、楽譜。 演奏のテンポで読むために作られています。
- 編集や制作をするなら、ピアノロール。 音符を記号ではなくブロックで表示するので、動かしやすくなっています。
- 音楽を始めたばかりなら、ピアノロール。 とっつきやすく、楽譜の記号を覚える前に、ピッチとリズムの関係を学べます。
- ほかの演奏者と一緒に取り組むなら、楽譜。 共通の言葉として使えるので、それ以外の形式よりもやり取りがスムーズです。
両方を使う
音楽を仕事にしている人の多くは、作業の段階に合わせて両方を使い分けます。
- 編曲の下書きにはピアノロール。 アイデアをすばやく書き留められ、並べ替えも簡単です。
- 採譜結果の確認にはピアノロール。 同期したオーディオを再生しながら、間違った音を見つけやすくなります。
- 演奏用の仕上げには楽譜。 フレーズやフィンガリング、強弱を書き加え、PDFを書き出します。
- 初めての人に教えるときは、最初の数週間はピアノロール。 譜表を読めるようになったら楽譜を使います。
- ほかの演奏者と共有するときは、演奏用なら楽譜。 相手が続きを編集するならMusicXMLかMIDIを使います。
使いやすい記譜ツールなら、2つの形式をスムーズに切り替えられます。Songscriptionでは、録音からどちらの形式も直接作れます。オーディオを楽譜にする機能では印刷できる楽譜を、ピアノロール生成機能では同じ録音から編集できるピアノロールを作れます。元のデータは同じなので、どちらかの表示で編集すると、もう一方にも反映されます。エディターを離れずに、ピアノロールでの修正から楽譜の書き出しまで進められます。
始めたばかりの人へ
ピアノを始めたばかりなら、楽譜を読む練習にもいずれ時間をかけることをおすすめします。本格的に弾いていくなら、五線譜の記譜の決まりは覚えておくと役立ちます。その入り口として、ピアノロールから始めるのもよい方法です。記号を覚える前に実際の曲を弾き始められ、ピッチとリズムの感覚が身につきます。その感覚は、楽譜を読むときにも役立ちます。ピアノロールでの編集については、オーディオからピアノロールへの変換ガイドを参照してください。録音から印刷できる楽譜を作るまでの流れは、録音をピアノの楽譜にするガイドで紹介しています。
ピアノロールから始めるなら、ピアノロールを中心に作られたAnything Pianoを使えます。曲を用意すると、iPhoneやiPadの画面に音符が上から流れてきます。演奏中はマイクで音を聴き、どの音を弾けたかを表示します。Fingeringをオンにすると、ピアノロールに指番号も表示されます。楽譜の表示はありません。同じ曲を両方の形式で見たいときや、楽譜を読む練習に進みたいときはSongscriptionを使えます。
最後に
ピアノロールと楽譜のどちらかを勧めるツールや教材では、両者が対立するものとして扱われることがあります。でも、それぞれ役立つ場面が違います。作曲者がアイデアを下書きする段階と、演奏者が完成した曲を読む段階では、使いやすい形式も変わります。ピアノロールを演奏用に無理に使うと、読みにくくなります。採譜の間違いを探すときも、オーディオと楽譜を照らし合わせるより、ピアノロールのエディターなら数秒で見つけられることもあります。
両方に慣れておくと、一方で曲を編集し、もう一方を見て演奏できます。ピアノロールと楽譜の間を行き来しながら、それぞれの表示を結びつけられます。
よくある質問
ピアノロールと楽譜の違いは何ですか?
どちらも同じ音楽を表していますが、表示で重視するものが違います。楽譜は演奏のための標準的な形式で、読み方を学んだ人が演奏しながら読めるように書かれています。ピアノロールは編集に使われる標準的な形式です。縦軸にピッチ、横軸に時間を取ったグリッドに、音符がそのまま表示されます。リズムを楽譜の表記に置き換えることはありません。
初心者はピアノロールと楽譜のどちらから始めるとよいですか?
まずはピアノロールから始めるのがおすすめです。鍵盤と表示が一対一で対応しているので、とっつきやすく、何が起きているかをすぐに追えます。楽譜の記号を覚える前に実際の曲を弾き始められ、ピッチとリズムの感覚も身につきます。その感覚は、後から楽譜を読むときにも役立ちます。
音楽家はピアノロールと楽譜の両方を使いますか?
はい。音楽を仕事にしている人は、編曲の下書きや採譜の確認にはピアノロールを、演奏用に曲を仕上げるときには楽譜を使うのが一般的です。使いやすいツールなら、両方の表示をスムーズに切り替えられます。Songscriptionでは録音からどちらの形式も作れます。元になるデータは同じなので、一方の表示で編集すると、もう一方にも反映されます。