この記事は楽譜の用語集の一部です。
ステム分離は、すべての音が1つのトラックにミックスされた完成済みの曲から、ボーカルやドラム、ベース、ギターなどを別々に取り出す技術です。数年前までは、魔法のように思える技術でした。採譜では、パートを分けると音を書き取りやすくなるので、よく話題に上ります。Songscriptionで録音を採譜するために、ステムを分離する必要はありません。作業によっては役立つ選択肢です。
ステム分離とは
ステムとは、曲の1つのパートを独立したトラックにした音源です。スタジオではボーカル、ドラム、ベース、鍵盤などを別々のトラックで重ね、最後に1つのステレオファイルにまとめます。聴く側が手にするのはその完成音源で、通常は個々のトラックを取り出せません。
ステム分離は、この最後の工程を逆にたどります。ミックス済みのファイルだけを使って各パートの音を推定し、別々のトラックとして取り出します。ボーカル、ドラム、ベース、その他の音に分けるのが一般的です。ツールによっては、その他の音をピアノやギターなどにさらに分けられます。
ステム分離の仕組み
ミックスされた音は同じ周波数帯で重なり合うため、きれいに切り分ける境目がありません。最近の分離技術では、元のトラックが分かっている大量の曲で学習したニューラルネットワークを使います。
モデルは声の動き、スネアの立ち上がり、ベースの安定した低音といった音源ごとの特徴を学びます。その特徴を手がかりに、混ざった音のどの部分がどの楽器に属するかを推定します。AIによる採譜の仕組みで紹介している採譜モデルも、人が書いたルールではなく、例から学習した特徴を手がかりにします。
パートを分けると採譜に役立つ理由
バンド全体の音を一度に聴くとき、採譜モデルは同じ音域で重なり合う複数の楽器を聞き分けてから、音符を書き出す必要があります。1つのパートだけを取り出せば、その問題はほぼなくなり、モデルはその楽器の音符を正しく捉えることに集中できます。
曲全体を採譜して楽器ごとに譜表を分けるには、まずステムを分離し、それぞれに合ったモデルで採譜すると、きれいな結果になることがよくあります。バンドやアンサンブルの録音なら、SongscriptionのMulti-Instrumentモードを使う方法もあります。ステムを分離しなくても、聴き取った楽器ごとにパートを分けた楽譜を一度に作れます。鍵盤、ギター、ベースのほか、弦楽器、金管楽器、木管楽器、シンセ、声、ドラムにも対応します。ステムを使った手順はバンド全体やマルチトラック音源の採譜で紹介しています。
分離によるアーティファクト
各パートを完全には分離できません。元のミックスでは各パートの周波数が重なっているため、分離したステムには水の中で聴くような不自然な響きや音のにじみ、ほかの楽器の音のわずかな混入が残ることがあります。ボーカルの息づかいが失われることもあります。普段のリスニングでは気になるかもしれません。
採譜では、音の開始位置とピッチが主な手がかりになるので、通常は問題ありません。ただし、ステムの音がひどく崩れたときは、元の録音を採譜したほうがよい結果になることがあります。元の録音には、すべての音の情報が残っているからです。このようなトレードオフがあるので、ステム分離は必要に応じて使います。
Songscriptionにステムは不要
Songscriptionは、受け取った録音をそのまま採譜します。事前にステムを分離する必要はなく、ほとんどの作業ではそのまま使えます。
- 1つの楽器を採譜する:そのままアップロードします。ピアノやギターのソロは、コードを含めて直接採譜できます。複数の音が同時に鳴る場合についてはピアノのポリフォニック採譜で説明しています。
- 曲全体を1つの楽譜にまとめる:ミックスを、パートをまとめた編曲として採譜します。通常は、メロディー、ハーモニー、ベースを大譜表にまとめたピアノ用の編曲になります。分離は不要です。
- 曲全体を楽器ごとに分けて採譜する:バンドやアンサンブルの録音なら、Multi-Instrumentでステムを分離せずに各パートを一度に書き出せます。各パートをできるだけきれいに採譜したいときは、先にステムを分離して、それぞれを個別に採譜する方法も役立ちます。
ステム分離は、目的に応じて選ぶ追加の手順です。まずは録音をそのままアップロードできます。複数の楽器を一度に扱う方法については、AIは複数の楽器を同時に採譜できる?で詳しく紹介しています。
ステム分離が役立つ場面
音が重なり合う録音から楽器ごとに別々の楽譜を作りたいときや、ほかの音に埋もれたパートだけを聴いて採譜したいときは、ステムを分離する手間をかける価値があります。採譜ではなくリミックスをするときにも役立ちます。分離した音源と音符そのもののどちらを使うか迷ったときは、マルチトラックMIDIとステムの違いを参照してください。
曲を覚えたり編曲したりするなら、録音を直接採譜するか、ミックス全体をピアノ用の編曲にするほうが早く、分離によるアーティファクトも避けられます。仕上げたい楽譜に合わせて方法を選び、直接採譜しても必要な形にならないときに分離を使います。分離する場合も、しない場合も、手元の同じ録音から始められます。
よくある質問
ステム分離とは何ですか?
ステム分離は、ミックス済みの録音を、ステムと呼ばれるパートごとの音源に分けることです。ボーカル、ドラム、ベースなどがそれぞれ別のトラックになります。最近のツールは、大量の曲で学習したAIモデルを使います。モデルは音源ごとの特徴を覚え、ミックスから各パートを取り出します。取り出したトラックは、それぞれをミュートしたり、リミックスしたり、1つずつ採譜したりできます。
採譜する前にステムを分離する必要はありますか?
Songscriptionは録音をそのまま採譜するので、先にステムに分ける必要はありません。ピアノやギターなど、1つの楽器の録音は、複数の音が重なるコードもそのまま採譜できます。複数の楽器が入ったミックスも、ピアノ用の編曲など、まとめた楽譜にできます。音が重なり合う録音から楽器ごとに別の譜表を作りたいときは、ステム分離を追加の手順として使えます。
ステム分離で音質は下がりますか?
分離によって音にアーティファクトと呼ばれる不自然な変化が生じることがあります。ミックス内のパートは周波数が重なっているので、完全には分離できません。分離したステムには、音のにじみや水の中で聴くような不自然な響き、ほかの楽器の音のわずかな混入が残ることがあります。聴くときには気になることもありますが、採譜では通常は問題になりません。モデルは、音の美しさよりも音の開始位置とピッチを手がかりにするからです。ステムの音がひどく崩れたときは、元のミックスを採譜したほうがきれいな結果になることもあります。
ステム分離などの準備は不要です。録音をそのまま使えます。曲をアップロードして、そのまま採譜する。
