資料採譜Andrew Carlins•読むのに約6分

音楽の採譜にはどんな種類がある? 全パートの楽譜、リードシートなど

採譜にはいくつかの形式があり、どれを選ぶかで書き出す内容が変わります。全パートの楽譜、リードシート、コード譜、ソロ、アンサンブルでは、書き出す情報も使う場面も違います。

全パートの楽譜、リードシート、コード譜、ソロ、アンサンブルの採譜形式を比較した図

この記事は音楽の記譜用語集の一部です。

採譜とは、録音を聴いて、読んで演奏できる楽譜などに書き起こすことです。選ぶ形式によって、ページに残す情報が変わります。形式が目的に合っていないと、細かすぎたり、曲を演奏するには情報が足りなかったりします。

音楽の採譜とは

採譜では、音源を聴きながら音符やリズム、コード、曲の構成を書き出します。仕上がりは楽譜やリードシート、コード譜のほか、MIDIやMusicXMLのようなデジタルファイルにもなります。何を残すかは、目的によって変わります。

映画音楽の作曲者には、すべての楽器の演奏内容が詳しく書かれた楽譜が必要です。新しい曲を覚える歌い手には、そこまでの情報は要りません。セットリストの曲をさらうギタリストなら、確認用の1ページがあれば足ります。必要な情報に合わせて形式を選ぶと、その後の作業も進めやすくなります。

全パートの楽譜

全パートの楽譜には、すべての楽器の演奏内容を、それぞれの譜表に詳しく書きます。採譜の中でも最も情報が多く、作るのにも手間がかかる形式です。

各パートの内容だけでなく、パート同士がどう組み合わさるかを確認したいときに使います。オーケストラの編曲者は曲全体を一度に見渡すために、映画音楽の作曲者は画面の動きと音楽を合わせるために使います。曲がどのように作られているかを詳しく学ぶときにも役立ちます。

オーケストラ全体の楽譜では、各ページに楽器の譜表が何段も並びます。一つひとつを正確に書き、ほかのパートと位置を合わせなければなりません。1つのパートに間違いがあると、ページ全体の読み取りにも影響します。

リードシート

リードシートには、メロディを音符で書き、その上にコード記号を記します。どう伴奏するか、音をどう補うかは演奏者に任されています。

この形式は、多くのプロの演奏者が最初に学ぶものです。ほとんどのジャズ演奏者が学ぶジャズのスタンダード曲集『リアル・ブック』も、大部分がリードシートでできています。

ソングライターやバンドも同じ形式を使います。曲を共有して、ほかの演奏者にそれぞれの解釈で弾いてもらいたいときに便利です。一音ずつ指定しなくても必要な情報は伝わります。同じリードシートから、2人の演奏者がまったく違う編曲を作ることもあります。

Songscriptionのアレンジ・カバー用ツールでは、メロディとその土台になるコードを取り出せます。さらに編集したいときは、結果をMusicXMLで書き出し、別のプラットフォームで開けます。

コード譜

コード譜は5つの形式の中で最も簡潔です。曲の構成と各セクションで弾くコードを示しますが、メロディは音符で書きません。細部をすべて書き出さずに、曲を通して演奏するための手がかりを伝えます。

バンドのリハーサルでもよく使われます。全員が知りたいのは、どのコードを弾くか、どこでセクションが変わるかです。すでに曲を知っていれば、メロディを音符で見る必要はありません。コード譜があれば、短い時間で全員が同じ構成を確認できます。

リードシートには、歌い手やソロを弾く人が追えるようにメロディが書かれています。コード譜にはコードだけが書かれているので、曲を知っている演奏者は必要な情報を見ながら弾けます。

ソロの採譜

ソロの採譜では、1つの楽器や歌声に絞り、演奏を一音ずつ書き出します。録音に入っているほかの音は省き、1つのパートだけを残します。これはSongscriptionが特に得意とする作業です。モデルは単一楽器の採譜を得意としています。ピアノのパート、ギターのフレーズ、歌のメロディを音源から楽譜を作るツールに通すと、比較的きれいな結果が得られる傾向があります。

録音の中の特定のパートを覚えたいときに使う形式です。ギターソロを覚える人や歌の表現を研究する人は、音符とタイミングを正確に書き出しておくと、それを追いながら練習できます。

演奏者が実際にどう弾いているかを学ぶのにも役立ちます。どこで間を取り、フレーズをどんなタイミングで弾き、どの音を長く伸ばしているかが分かります。ほかの人が採譜したものを読むのも役立ちますが、自分で採譜すると、読むだけではできない耳のトレーニングになります。

アンサンブルの採譜

アンサンブルの採譜では、小編成のグループの全パートを1つの楽譜にまとめます。各楽器の譜表を同じページに上下に並べるので、各パートがどう重なり合うかを見られます。

編曲者は、小編成の演奏者同士がどう関わっているかを理解したり、再現したりするときに使います。バンドや小編成の弦楽器のグループ、ホーンセクションなら、各演奏者が同時に何をしていて、パート同士がどう絡み合うかを確認できます。リードシートやコード譜には音楽の一部分しか示されないため、そこから読み取るのは難しいことです。

自分のパートだけを示す楽譜と、全パートを並べた楽譜にも違いがあります。アンサンブルの採譜では全パートを並べるので、どの演奏者も自分のパートに加えて、ほかのパートとの関係を確認できます。

AI採譜ツールは各形式にどう対応するか

AI採譜ツールは、かつて何時間もかかっていた聴き取り作業を担います。録音から音符とリズムを拾い、コード記号を判別して、楽器ごとにパートを分けます。1本のメロディを採譜するツールで、より複雑な編曲を扱うこともできます。

書き出す形式によって、その後にできることが変わります。楽譜は印刷して読み、MIDIやMusicXMLは編集したり、別のプログラムに移したりします。これらを実際の作業でどう組み合わせるかは、音楽の採譜ガイドで紹介しています。

どのツールも毎回すべてを正しく採譜できるわけではありません。音源を聴き直し、ときどき出てくる間違った音符を見つけて調整します。ソフトウェアが省いてくれるのは、最初にすべてを楽譜に書き出す時間のかかる作業です。よくある間違いと直し方は、AI採譜の間違いを修正する方法で詳しく説明しています。

目的に合った採譜形式の選び方

何をしたいか、誰のために作るかを考えると、形式を絞り込めます。

  • 全パートの組み合わせを見たいときは、全パートの楽譜。
  • ほかの演奏者にそれぞれの解釈で弾いてもらいたいときは、リードシート。
  • リハーサルで全員が同じコードを確認したいときは、コード譜。
  • 1人の演奏を正確に学びたいときは、ソロの採譜。
  • 小編成のグループの演奏を再現したいときは、アンサンブルの楽譜。

Songscriptionの無料採譜ツールに曲をアップロードして、目的に合う出力を確かめることもできます。

最後に

ライブの前に書き殴ったコード譜がちょうど役立つこともあれば、オーケストラ全体の楽譜では情報が多すぎることもあります。同じ録音から、全パートの楽譜にも、リードシートにも、ソロの1パートにもできます。映画音楽の作曲者に必要なものは、リハーサル中のギタリストには役に立ちません。

採譜を始める前に、誰が読むのか、どんな情報が必要かを考えて形式を決めておくと、その後の作業を進めやすくなります。

よくある質問

音楽の採譜にはどんな種類がありますか?

主な形式は、全パートの楽譜、リードシート、コード譜、ソロの採譜、アンサンブルの採譜の5つです。全パートの楽譜は楽器ごとに演奏内容を書き、リードシートはメロディとコード記号を組み合わせます。コード譜はメロディを音符で書かず、コードと曲の構成を示します。ソロの採譜は1つの楽器や歌声を一音ずつ書き出し、アンサンブルの採譜は小編成の全パートを同じページに重ねて書きます。

リードシートとコード譜はどう違いますか?

リードシートはメロディを音符で書き、その上にコード記号を記します。歌い手やソロを弾く人がメロディを追えます。コード譜にはメロディを書かず、コードと曲の各セクションの構成だけを示します。曲をすでに知っている人に向いた、より簡潔な形式です。

AIツールはどの種類の採譜が得意ですか?

AIツールが最も得意とするのは、1つの楽器や歌声を取り出すソロの採譜です。ピアノのパート、ギターのフレーズ、歌のメロディは、比較的きれいに採譜される傾向があります。同じツールでより複雑な編曲も採譜できますが、毎回すべてが正しくなるわけではありません。音源を聴き直して調整する必要はありますが、最初にすべてを楽譜に書き出す時間のかかる作業を省けます。

著者について

Andrew Carlins

著者

Andrew Carlins

Songscription共同創業者・CEO

アンドリューは、弾きたい曲の楽譜が見つからないことにうんざりしていた音楽仲間数人と、スタンフォード大学でSongscriptionを共同創業しました。子どもの頃からピアノとバリトンサクソフォンを演奏し、ミュージカルの舞台にも立っていました。もう何年も舞台には立っていませんが、今も腕は鈍っていないつもりです。録音から音を拾って楽譜にすることについて書いています。

チームについて詳しく見る

同じテーマの記事を読む