チュートリアル楽譜Andrew Carlins•読むのに約8分

曲をハープ用にアレンジするには

リクエストされる曲の多くには、ハープ用の楽譜がありません。ハープ奏者にとって、アレンジは日々の仕事です。弾きやすいキーを選び、ペダルやレバーの切り替え、グリッサンドの書き方を考えながら、曲をハープ用に仕上げます。

録音から採譜した楽譜をもとに、弾きやすいキーを選び、ペダルやレバー、グリッサンドを考えながらハープ用にアレンジする様子

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結婚式の入場曲、演奏の仕事で頼まれるポップスのバラード、礼拝の讃美歌。ハープで演奏を頼まれる曲のほとんどは、ハープ用の楽譜が出版されていません。そこで、奏者自身がアレンジします。考えることは大きく4つです。楽器に無理のないキーを選ぶこと、メロディーに伴奏を付けること、無理なく手が動かせるように書くこと、そしてハープの余韻を生かすことです。この4つがうまくかみ合うと、自然な響きで、手も無理なく動かせるアレンジになります。

いちばん手間と時間がかかるのは、たいてい最初の段階です。録音の音を、自由に直せる音符にしていかなければなりません。採譜ツールを使えば、この段階を数分で進められます。下書きができたら、ハープ用の仕上げは手作業で進めます。

ハープ奏者が自分でアレンジする理由

出版されているハープの曲はありますが、その範囲は限られています。依頼主や聴き手が求める曲の多くは、その外にあります。結婚する2人には思い出の曲があり、イベントでは最近の曲を求められます。教会では、その週の讃美歌を指定されたキーで弾く必要があります。どれもハープ譜が用意されているわけではありません。だから、ハープ奏者にとってアレンジは日常の仕事です。

採譜とアレンジでは、することも違います。採譜では、すでに演奏された音を書き留めます。アレンジでは、ハープで何を弾くかを決めます。キーを選び、音の多いピアノ伴奏を整理し、弦で弾きやすいようにフレーズを組み直す作業です。ピアノ用にアレンジするガイドで扱っている、メロディーと伴奏を組み立てる考え方は、ハープにもそのまま使えます。音を楽譜に書き起こす段階については、採譜の方法で詳しく説明しています。ハープでは、そこに楽器ならではの制約が加わります。特に大きいのがキーの選び方です。

ハープで弾きやすいキーを選ぶ

ハープには、白鍵と黒鍵の区別がありません。音名ごとに弦があり、その音を上げ下げするには機構を操作する必要があります。ほかの多くの楽器以上にキーの選択が演奏を左右するのは、このためです。どんな操作が必要かは、使うハープによって変わります。

レバーハープには、各弦の上部に小さなレバーが付いています。レバーを上げると、その弦の音が半音上がります。基本は演奏前に設定します。曲の途中でも切り替えられますが、片手が空いている必要があり、その間は弦から手が離れます。レバーハープは通常、レバーをすべて下げた状態でフラット系のキーに調弦します。そこからレバーを上げてシャープの多いキーに近づけていくので、無理なく扱える範囲はおおよそフラット3つ〜シャープ4つです。演奏前に上げておくレバーが少なく、両手が忙しいところでの切り替えも少ない曲ほど、弾きやすくなります。

ペダルハープには、レバーの代わりに音名ごとの7つのペダルがあります。それぞれにフラット、ナチュラル、シャープの3段階の位置があります。1つのペダルを動かすと、同じ音名の弦のピッチがすべて同時に変わります。足で操作するので、両手で弾き続けたまま音を変えられ、どのキーにも対応できます。ただし、キーを自由に選んでよいわけではありません。キーに含まれない臨時記号が出てくるたびに、ペダルをいつ切り替えるか考える必要があります。切り替えの速さにも限度があり、目安は左右それぞれ1拍に1回までです。左足側と右足側のペダルなら、同時に動かせます。速いパッセージで切り替えが続くキーは、ほとんど動かさずに済むキーよりも、音をきれいにつなぐのがずっと難しくなります。

どちらのハープでも、臨時記号を少なくし、音の動きが多いところで切り替えを減らすのが基本です。フラット系のキーは、その点で向いていることが多いです。ハープではダブルシャープやダブルフラットを使わないため、フラットを使う表記にすると、異名同音の書き換えに悩む箇所も減らせます。原曲のキーが弾きにくければ、移調してください。具体的な方法は、移調とは何かと音楽の移調ツールで説明しています。

メロディーと伴奏を組み立てる

キーが決まったら、ピアノと同じ大譜表で音を組み立てます。右手は高音域でメロディーを弾き、左手はその下の低音域でハーモニーを支えます。ピアノとの違いは、音の数を控えめにすることです。ピアノなら重ねられる音でも、ハープには多すぎることがあります。弦の余韻が残るので、音を減らしたほうが、たいていはよく響きます。

左手の伴奏でハープらしさを出しやすいのは、アルペジオです。コードの音を拍の中に分けて弾くと、低音域で和音をまとめて長く鳴らしたときの濁りを避けながら、豊かな響きを出せます。低い音から高い音へ素早くずらして弾く和音も、よく使います。音が次々に広がるこの弾き方はハープに自然になじむため、特別な指定のない和音も、ずらして弾く前提で書かれることがよくあります。すべての音を同時に鳴らす和音は、強く打ち出したいところに使ってください。

音域にも気を配ります。ハープの低音は豊かによく響くので、単音やゆっくりしたアルペジオに向いています。速く動く音型は、音が混ざって輪郭がぼやけます。いちばん幅広く使えるのは中音域です。アルペジオも、細かく動くフレーズも、和音もはっきり鳴ります。高音域は明るく、余韻が短めなので、長く響かせる和音より、短く素早い音型に向いています。動きの多い伴奏は中音域に置き、いちばん低い弦は土台になるベース音に使うと、全体のバランスが取りやすくなります。

ハープの弾き方と響きに合わせて書く

ハープ用に書くときは、弦がどう鳴り、どう響くかを考えます。特に気を付けたいのは、次の点です。

  • 同じ弦で速い連打を書かないようにします。 ピアノの鍵盤と違い、ハープの弦はもう一度はじくまでに少し時間が必要です。1本の弦で同じ音を素早く繰り返す書き方には向きません。そこで異名同音を使います。たとえばDシャープとEフラットの隣り合う2本の弦を同じピッチにして、交互に弾きます。2本の指を使い、同じ音を連打しているように聴かせる方法です。
  • 弾きやすさに合わせて異名同音を書き分けます。 弦の音を上げ下げすると、隣の弦と同じ音にできます。どの弦を使うと手が動かしやすいか、レバーやペダルを切り替えやすいかに合わせて、音の表記を選べます。ハープではダブルシャープやダブルフラットを使わないので、必ず異名同音に書き換えてください。
  • グリッサンドで鳴らす音は、レバーやペダルで設定します。 開放弦をなぞると、そのとき調弦されている音が鳴ります。通常は全音階になりますが、異名同音を使って複数の弦を同じピッチにすると、不要な音をなくせます。7thコードの音だけが鳴るグリッサンドも、この方法で作ります。グリッサンドの横には、必ず設定を書いてください。
  • 余韻を生かします。 ハープにはダンパーペダルがありません。音は自然に消えるか、手で止めるまで響き続けます。重なった音は自然に混ざるので、その広がりを生かして書きます。音を止める必要があるところだけ、消音の指示を付けてください。

採譜した音をハープ用にアレンジするときは、こうした弦の仕組みに合わせて音を選びます。これまで単旋律の管楽器を中心に演奏してきたなら、フルートのアレンジガイドと比べると違いが分かります。フルートでは旋律は1本で、コードの音の並べ方を考える必要はありません。

下書きを短時間で作る

Songscriptionにハープモードはありません。ペダルダイアグラムやグリッサンドまで整った、完成済みのハープ譜が出てくるわけではありません。短縮できるのは、録音を編集可能な音符にする作業にかかる時間です。音符の入力にかけていた時間を、ハープ用のアレンジに使えます。

まず、音声をアップロードするかリンクを貼り付けると、Songscriptionで楽譜に書き起こせます。アレンジモードを使えば、メロディーと伴奏を2段の譜表に分けたピアノ風のアレンジも作れます。両手に音を分けたこの形を、ハープ用のアレンジの土台にできます。ピアノソロのアレンジを土台にしたいときは、ピアノアレンジ生成ツールも使えます。下書きができたら、ブラウザーのエディターでハープ向きのキーに移調し、間違った音を直します。難しいパッセージは、ピアノロールの再生速度を落として確認してください。ピッチを変えずに聴きながら、音をどう仕上げるか判断できます。

2段の譜表の下書きが整ったら、MusicXMLで書き出し、MuseScore、Sibelius、Doricoのいずれかで開きます。どのソフトもこの形式を読み込めます。そこで、ペダルやレバーの切り替え、グリッサンドの線と設定、フィンガリングなど、ハープ用の記号や指示を加えます。Doricoと現在のMuseScoreには、ハープのペダルダイアグラム専用ツールがあります。Sibeliusではプラグインを使ってペダルダイアグラムを扱えます。音符がそろえば、こうした楽譜作成ソフトで仕上げを進められます。Songscriptionの無料枠では最大30秒まで採譜できるので、曲の一部を試すのに使えます。有料プランなら曲全体を扱えます。ハープで自然に弾けるように仕上げる作業は、どちらの場合も自分で進めます。ツールを使えば、編集を始めるまでに一晩かかっていた作業を、数分に短縮できます。

よくある質問

ハープ用にアレンジしやすいキーは?

臨時記号が少ないキーが向いています。レバーハープなら、フラット系のキーが弾きやすいです。通常はレバーをすべて下げた状態でフラット系のキーに調弦し、レバーを上げてシャープの多いキーに近づけていきます。そのため、F、B♭、E♭などのキーなら、演奏前に上げておくレバーが少なくて済みます。ペダルハープはどのキーでも弾けますが、ペダルをほとんど動かさずに済む曲に比べ、頻繁に切り替える曲は音をきれいにつなぐのが難しくなります。フラットを使う表記なら、ハープでは使えないダブルシャープも避けられます。音の動きが多いところで、レバーやペダルの切り替えが少なくなるキーを選んでください。

レバーハープでどんな曲でも弾けますか?

曲に合わせた工夫が必要です。レバーハープでは、レバーで弦の音を半音上げることしかできません。レバーは演奏前に設定するか、休符の間に切り替えます。操作する間は片手を弦から離す必要があるからです。転調が多い曲や、フレーズの途中に臨時記号がたくさん出てくる曲は、レバーハープでは弾きにくくなります。弾きやすいキーを選び、臨時記号を減らし、異名同音の表記を使えば、演奏できる曲の幅はかなり広がります。ただ、半音階的な動きが多い曲には、足で音を変えられるペダルハープが向いています。

ハープのグリッサンドはどう書きますか?

ハープのグリッサンドは開放弦を続けてなぞる奏法なので、そのときのレバーやペダルの設定どおりの音が鳴ります。通常の全音階のグリッサンドでは、スケールの7つの音が鳴ります。ドミナント7thなど、特定のコードだけを鳴らしたいときは、異名同音を使って2本の弦を同じピッチに設定します。不要な音を別の弦と同じ音に置き換えることで、なぞったときにコードトーンだけが鳴るようになります。楽譜には始めと終わりの音符を線でつなぎ、その横にペダルやレバーの設定を書きます。演奏者にもソフトにも、どの音が鳴るかが伝わる書き方です。

Songscriptionにハープモードはありますか?

ハープ専用の出力はありません。Songscriptionでは、編集できる下書きを短時間で作れます。曲を採譜するか、メロディーと伴奏を2段の譜表に分けたピアノ風のアレンジを作り、ブラウザーのエディターでハープ向きのキーに移調します。その後、MusicXMLで書き出し、MuseScore、Sibelius、Doricoでハープ用の仕上げをします。ペダルやレバーの切り替え、グリッサンド、フィンガリングを書き加えるのはこの段階です。時間のかかる音符入力を省けますが、ハープの弾き方に合わせて仕上げる作業は自分で進めます。

録音から始めるなら、音声から楽譜を作成するページで2段の譜表の下書きを作ります。弾きやすいキーに移調してから、楽譜作成ソフトでハープ用の記号や指示を加えてください。ほかの楽器向けのアレンジについては、ピアノとフルートのガイドもあります。

著者について

Andrew Carlins

著者

Andrew Carlins

Songscription共同創業者・CEO

アンドリューは、弾きたい曲の楽譜が見つからないことにうんざりしていた音楽仲間数人と、スタンフォード大学でSongscriptionを共同創業しました。子どもの頃からピアノとバリトンサクソフォンを演奏し、ミュージカルの舞台にも立っていました。もう何年も舞台には立っていませんが、今も腕は鈍っていないつもりです。録音から音を拾って楽譜にすることについて書いています。

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