この記事は、音楽の先生のためのAI採譜ガイドに含まれる記事です。
音楽の教室では、身近な仕事にAIが使われ始めています。生徒の好きな曲の編曲にかかっていた一晩分の時間を省けたり、初心者が弾いたフレーズにその場でフィードバックを返せたりします。ただ、AIという名前が付いた製品すべてが、実際にAIを使っているわけではありません。用途ごとにツールを見ていくと、機械学習を使うものと、それ以外の優れたデジタルツールとの違いが分かります。
機械学習を使っていなくても、お金を払う価値のあるツールはあります。どちらを買うのか知っておけば、その仕組みに合った基準で選べます。
採譜:録音を楽譜にする
録音を聴いて楽譜に起こすには、以前は先生が耳で音を拾う必要があり、準備に時間がかかっていました。AIなら数分で形になります。授業で取り上げられる曲の幅も変わります。
- Songscription。 機械学習を使い、録音、ファイル、YouTubeのリンクから楽譜を作ります。ピアノをはじめ、多くの楽器に対応しています。コード検出、ピアノカバーモード、難易度の調整ができ、PDF、MIDI、MusicXML、Guitar Pro形式で書き出せます。ブラウザで動くので、学校でも使いやすいです。
- AnthemScore。 音源を楽譜やMIDIにするデスクトップアプリです。サブスクリプションではなく買い切りで、特にピアノや歌のない楽器演奏の採譜を得意としています。
- Klangio。 ピアノ、ギター、ベースなど、楽器別のウェブアプリがあります。一般向けのMelody Scannerも同じエンジンで動いています。短い音源なら無料で結果をプレビューできます。
レッスンでの使い方は、音楽の先生向けAI採譜ガイドで紹介しています。授業の具体的な進め方は、教室でAI採譜を使う方法を参照してください。
Songscriptionが役立つ場面
Songscriptionは私たちが作っている製品です。教室で使う採譜ツールとして、まず挙げたいのは対応する楽器の幅です。最も対応が進んでいるのはピアノですが、ギター、ベース、バイオリン、フルート、トランペット、サックス、ドラム、ボーカルにも対応しています。これらの対応は比較的新しく、ボーカルはまだ実験段階です。
もう一つは、1回のアップロードからPDF、MIDI、MusicXML、Guitar Pro形式で書き出せることです。採譜をやり直さずに、同じ結果を楽譜作成ソフト、DAW、タブ譜を読むソフトへ渡せます。
無料枠では30秒の採譜を試せます。支払う前に、生徒が実際に持ってくる曲で結果を確かめられます。Multi-Instrumentでは、バンドやアンサンブルの録音から、弦楽器、金管楽器、木管楽器も含めて全パートを一度に楽譜にできます。ただし、音が重なったオーケストラの録音は、小編成の録音よりも手直しが多くなります。
ループ再生や練習用の機能は内蔵していません。音に合わせて繰り返しさらうなら、後で紹介するアプリと組み合わせます。生徒からリクエストされた曲を楽譜にする仕事が多いなら、Songscriptionが得意な用途です。演奏中のフィードバックが主な目的なら、曲に合わせて弾く練習アプリのほうが役立ちます。
音源分離:ミックスからパートを取り出す
MoisesやLalal.aiは、機械学習を使って録音をボーカル、ドラム、ベースなどの音源に分けます。分けた音源は「ステム」と呼びます。生徒が練習している楽器だけを取り出して聴いたり、生徒が弾くパートを抜いて伴奏音源を作ったりできます。採譜にも役立ちます。すべての音が混ざった録音より、きれいに分離したステムのほうが、ずっと正確に採譜できます。先ほどの採譜ツールとも組み合わせて使えます。
演奏を聴いて反応する練習アプリ
Yousician、Simply Piano、flowkey、Skooveなどのアプリは、端末のマイクで生徒の演奏を聴きます。正しい音をタイミングよく弾けたか、その場でフィードバックを返します。この音の認識には機械学習が使われています。レッスンの合間に一人で練習するときも、演奏を確かめながら先へ進めます。
ただし、決められたコースに沿って学ぶ仕組みなので、アプリが求める弾き方に合うほど評価されます。練習の相手にはなりますが、先生に代わって演奏を聴いて判断したり、曲を選んだりするものではありません。
最近登場したAnything Pianoには、決められたコースがありません。先生が曲を選びたいときに使いやすい仕組みです。Songscriptionと同じチームが開発したiPhone・iPad向けアプリで、固定の曲目から選ぶ代わりに、好きな録音からピアノパートを作ります。表示するのは楽譜ではなくピアノロールです。マイクで演奏を聴き、どの音を弾けたかが画面に表示されます。
曲は短い部分に分かれていて、一つずつ練習でき、進み具合も分かります。指番号の表示をオンにすると、ピアノロールの音に、おすすめの指番号が付きます。アコースティックピアノでも使えるので、家庭にMIDIキーボードがなくても使えます。楽譜を読む形式ではないため、先生が出した曲をレッスンの合間にさらう用途に向いています。読譜を学ぶための教材とは役割が違います。
演奏評価ツール:課題曲を採点する
SmartMusic、Music Prodigy、Noteflightの追加機能SoundCheckでは、生徒が課題曲をマイクに向かって演奏します。ソフトは課題の楽譜を追いながら、音程が高かった音、低かった音、タイミングが早かった音、遅かった音を記録し、採点結果を成績簿に残します。先生は曲を一度課題に設定すれば、全員の録音を最初から聴かなくても、生徒ごとにどこで間違えたかを確認できます。
生徒の人数が多いと、この仕組みが役立ちます。60人分の演奏を毎週すべて聴くのは難しくても、60人分の採点結果なら確認できます。レッスンでは、実際につまずいたフレーズに時間を使えます。
仕組みの中心は、演奏を決まった正解と比べる信号処理です。さまざまな入力から学ぶ汎用的な学習モデルではないため、AIという呼び方には少し幅があります。それでも比較の精度は高く、課題曲の確認にかかる時間を減らせます。一方、採点の基準は一つの楽譜です。指定の曲やエチュードには向いていますが、即興や生徒自身の編曲を評価する用途には向いていません。
AIという呼び名が主に宣伝で使われる分野
AIという名前が付いていても、主に決められたルールで動く分野が二つあります。どちらも優れたツールですが、何を期待できるかは仕組みによって違います。
- 楽譜作成ソフト。 MuseScore(無料)、Flat、Noteflight、Dorico、Sibeliusは、楽譜を書き、見やすく整えるための優れたソフトです。ただし、編集の仕組みはAIではありません。Finaleは2024年に開発・販売が終了しているため、これから授業の中心に据えるのは避けてください。
- 楽典や初見演奏の練習ツール。 musictheory.net、Tenuto、EarMaster、Teoria、Sight Reading Factoryは練習に役立ちます。ただ、採点はルールに沿った正誤判定です。問題の出し方を調整する仕組みも、学習モデルではなく、問題の順序を組み替えるものです。
無料の楽譜作成ソフトと、機械学習を使う採譜ツールを組み合わせれば、費用を抑えながら授業の準備を進められます。楽譜作成ソフトについては、無料の楽譜作成ソフトの比較で紹介しています。
先生が最初にそろえたいツール
これから使うツールをそろえるなら、ほぼ無料で始められるシンプルな組み合わせがあります。生徒のリクエストを楽譜にしてレベルを調整する採譜ツール、手直しと印刷のための無料の楽譜作成ソフト、伴奏音源や分離したステムを作る音源分離ツールです。レッスンの合間にも演奏へのフィードバックが必要なら、曲に合わせて弾く練習アプリや演奏評価ツールを加えます。
Songscriptionは、採譜と難易度の調整を担当します。初心者向けに曲を簡単にする手順は、生徒に合わせて楽譜を簡単にする方法で紹介しています。楽譜の難易度調整機能の使い方も確認できます。音楽の先生、学生、非営利団体向けの割引については、お問い合わせください。最初に確かめるなら、生徒の好きな曲を一つ選び、先生向けの手順に沿って採譜すると、どれくらいの時間で楽譜になるかが分かります。
よくある質問
2026年、音楽教育で使いたいAIツールには何がありますか?
機械学習を実際に使っているツールは、いくつかの用途に集中しています。録音を楽譜にする採譜ツールにはSongscription、AnthemScore、Klangioがあります。音源をステムに分ける音源分離ツールにはMoisesやLalal.ai、マイクで生徒の演奏を聴く練習アプリにはYousician、Simply Piano、flowkeyなどがあります。教室向けのツールには、AIと呼ばれていても、実際にはよくできたデジタルツールというものも少なくありません。それも十分役立ちますが、選ぶときには違いを知っておくと判断しやすくなります。
音楽教育のツールで、本当にAIを使っているのはどれですか?
採譜や音源分離では、実際に機械学習が使われています。マイクで演奏をリアルタイムに聴く機能は、曲に合わせて弾く練習アプリや、SmartMusic、Music Prodigyなど一部の演奏評価ツールにあります。MuseScore、Flat、Noteflightのような楽譜作成ソフトは優れたツールですが、AIではありません。楽典や初見演奏の練習も、多くは学習モデルではなく、決められたルールに基づいて動きます。宣伝で使われる「AI」という言葉の範囲は広いため、呼び名よりも、実際に何をしてくれるかで選ぶほうが確実です。
AI採譜は音楽の先生のどんな仕事に役立ちますか?
生徒が弾きたい曲を教えるとき、時間がかかるのは、まずその曲を楽譜にする作業です。AI採譜なら、録音をアップロードすると数分で編集できる楽譜ができます。生徒のレベルに合わせて簡単にしたり、合奏用にパートを分けたり、耳のトレーニングの教材にしたりできます。手作業では何時間もかかっていた編曲の下書きを、短時間で作る使い方です。そこから先生自身の判断で仕上げます。
Songscriptionは先生や学生も無料で使えますか?
Songscriptionには、30秒の採譜を試せる無料枠があります。有料プランでは、より長い音源の採譜と、すべての書き出し形式を使えます。学生、教育者、音楽分野の非営利団体向けの割引もあるので、お問い合わせください。授業で使う前に、生徒が持ってくる曲で確かめるなら、無料枠で試せます。