資料採譜Andrew Carlins•読むのに約8分

採譜にはどのオーディオ形式が向いていますか?

採譜の精度には、アップロードするファイルの音質で決まる限界があります。小さな音で録れたスマートフォンの音源より、クリアなWAVや高ビットレートのMP3のほうが正確に採譜できます。使える形式や録音で気をつけたい点、AIが音符を読み取りやすくするための準備をまとめました。

採譜にはどのオーディオ形式が向いていますか?

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採譜の精度を上げるために自分で選べるものの中で、最も影響が大きいのは元のファイルです。WAVやFLACは音の情報を失わないロスレス形式なので、採譜に適しています。ただ、クリアな高ビットレートのMP3でも、ほぼ同じ精度で採譜できます。形式が精度の限界を決めることはあまりなく、結果を左右するのは、そこに収められた録音の質です。

採譜に使える形式

一般的なオーディオ形式は、どれも採譜に使えます。Songscriptionには、次の形式のファイルをアップロードできます。

  • WAV、FLAC:音の情報を失わないロスレス形式です。手元にあれば、最も忠実に音を残せる選択肢です。
  • MP3、M4A:広く使われている圧縮形式です。ビットレートが高ければ、採譜にも十分な音質があります。手元のファイルも、多くはこのどちらかです。
  • AAC、OGG:こちらも圧縮形式で、採譜に使えます。

ファイルを用意せずに、YouTubeのリンクを貼り付けたり、マイクから直接録音したりすることもできます。どの音源も、AIが解析用の内部形式に変換します。アップロード前に、自分で別の形式へ変換する必要はありません。

ロスレス形式と非可逆圧縮形式の違い

WAVやFLACなどのロスレス形式は、元の音の情報をすべて保存します。MP3やAACなどの非可逆圧縮形式は、人の聴覚の仕組みに基づいて、耳では気づきにくいと予測される部分を取り除きます。その分ファイルが小さくなるので、1曲を数MBに収められます。

採譜で問題になるのは、取り除かれた情報が音符の読み取りに必要だったかどうかです。十分なビットレートがあれば、通常は問題になりません。音の高さを表すピッチや、音が鳴り始めるタイミングは、圧縮後もよく保たれます。ロスレス形式なら、圧縮による情報の欠落を避けられます。手元にあるのが320kbpsのMP3だけでも、そのままアップロードして大丈夫です。

ファイル形式より録音の質が結果を左右する理由

WAVとMP3のどちらを選ぶか考えるときには、録音の中で演奏がどれくらいはっきり聴こえるかも確かめてください。採譜モデルは、音からピッチとタイミングを読み取ります。音がぼやけていれば、ファイルの音質をどれだけ高く保っていても精度は下がります。

たとえば、騒がしいカフェの離れた場所からピアノを録ったWAVより、静かな部屋で鍵盤から約30cmの距離で録ったMP3のほうが、正確に採譜できます。形式の違いが与える影響は小さく、録音の質のほうが大きく響きます。精度に影響する音の条件については、AIによる採譜の精度に差が出る理由で詳しく説明しています。

採譜しやすい録音にするには

自分で録音するなら、次の点を押さえると音を読み取りやすくなります。

  • マイクを音源に近づけてください。近いほど直接届く音が多くなり、部屋の響きが入りにくくなります。
  • 話し声や扇風機、車の音が入らない静かな部屋で録音してください。雑音が重なると、一つひとつの音がはっきりしなくなります。
  • 音割れを避けるため、録音レベルには余裕を残してください。レベルが高すぎると大きな音の部分が歪み、モデルが手がかりにする音の立ち上がりも崩れます。
  • リバーブやエフェクトを強くかけず、演奏の音がはっきり聴こえる状態で録ってください。強い残響やエフェクトは、ピッチやタイミングをぼかします。響きを抑えて近くで録った音のほうが、読み取りやすくなります。

クリアに録音する手順は、AIで正確に採譜するための手順でも紹介しています。

気づかないうちに精度を下げる録り方や変換

すでに圧縮されたファイルを高いビットレートで書き出し直しても、音の情報は増えません。圧縮で失われた情報は戻せないので、ファイルサイズが大きくなるだけです。

強いエフェクトやEQをかけた状態で録音すると、かえってモデルが音を読み取りにくくなることもあります。音量を大きく仕上げた音源を取り込めば、必ずよい結果になるわけでもありません。マスタリングでダイナミックレンジを強く圧縮すると、モデルが音の開始位置を見つける手がかりにしている強弱の差が小さくなってしまうためです。選べるなら、音量を大きくする加工をした録音より、クリアで自然な録音を使ってください。

ファイルがなくても、YouTubeのリンクを貼り付ければ、動画しか手元にない曲を採譜できます。YouTubeの音声も、通常は採譜に使える音質です。詳しい使い方は、YouTubeから楽譜を作る方法で紹介しています。

スマートフォンの録音も使えます。静かな場所で音源の近くから録れば、自分の演奏を録ったボイスメモも十分に採譜の元になります。手順はボイスメモを楽譜にする方法にまとめています。スマートフォンで保存されたM4Aなどのファイルは、そのままアップロードできます。

よくある質問

採譜にはどのオーディオ形式が最適ですか?

WAVやFLACのように、非可逆圧縮による情報の欠落がないロスレス形式が理想です。ただ、高ビットレートで音質のよいMP3やM4Aでも、ほぼ同じ精度で採譜できます。形式が結果を制限することはあまりありません。それよりも影響が大きいのは、録音そのものの質です。離れた場所から雑音と一緒に録ったWAVより、音がはっきりした普通のMP3のほうが正確に採譜できます。手元にある中で最も音質のよいファイルを使えば、ファイル形式を気にしすぎる必要はありません。

MP3でも採譜できますか? WAVが必要ですか?

MP3でも問題ありません。256〜320kbps程度の高ビットレートなら、採譜モデルが必要とする音の情報が残ります。ほとんどの人は、WAVとの差を実用上感じないはずです。WAVやFLACが手元にあれば、情報が失われていないそちらを選ぶとよいですが、アップロード前にMP3をWAVに変換する必要はありません。MP3への圧縮で失われた情報は戻らず、ファイルサイズが大きくなるだけです。

スマートフォンで録音した音でも採譜できますか?

はい。スマートフォンの録音を使っている人も多くいます。音源に近づき、静かな部屋で録音すれば、採譜に使える音を録れます。音割れを防ぐため、録音レベルを上げすぎないようにしてください。スマートフォンで保存されるM4Aなどのファイルは、そのまま使えます。精度を左右するのは形式よりも録り方です。周囲の雑音や音源からの距離、部屋の反響で音がぼやけると、精度が下がります。一つの楽器を丁寧に録ればうまく採譜できますが、騒がしい部屋で音源から離れて録った音では難しくなります。

ファイルが手元にあれば、アップロードして採譜の精度を確かめられます。

著者について

Andrew Carlins

著者

Andrew Carlins

Songscription共同創業者・CEO

アンドリューは、弾きたい曲の楽譜が見つからないことにうんざりしていた音楽仲間数人と、スタンフォード大学でSongscriptionを共同創業しました。子どもの頃からピアノとバリトンサクソフォンを演奏し、ミュージカルの舞台にも立っていました。もう何年も舞台には立っていませんが、今も腕は鈍っていないつもりです。録音から音を拾って楽譜にすることについて書いています。

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