資料採譜Andrew Carlins•読むのに約9分

セッションミュージシャンのためのAI採譜:録音をもっと早く楽譜に

セッションの仕事は、録音だけでは終わりません。演奏を楽譜やタブ譜、MIDIにするには、何時間もかかっていました。AI採譜を録音後の作業に取り入れると、納品までの流れや料金の付け方も変わります。

AI採譜で録音から楽譜、タブ譜、MIDIを短時間で作るセッションミュージシャン

作曲家とソングライターのためのAI採譜ガイドの関連記事です。

セッションの仕事は、録音だけでは終わりません。多くのセッションミュージシャンには、録音を止めてから始まる仕事があります。演奏した内容を、依頼者が使える楽譜やタブ譜、MIDIファイルにまとめる作業です。以前は、そこに何時間もかかっていました。

AI採譜を使うと、その時間の使い道が変わります。録音後の作業にどう組み込めるのか、採譜が早く済むとどんな依頼を受けられるのかは、ツールが実際にできることによって違います。私たちPlay Anythingも、そうしたツールの一つであるSongscriptionを開発しています。Songscriptionにも、得意なことと、まだ手直しが必要なところがあります。

セッション後の採譜にかかっていた時間とコスト

録音が終わってからも、長く作業が続くセッションミュージシャンは少なくありませんでした。たとえば、プロデューサーの依頼でギターのリードフレーズを1時間録音しても、それを使える楽譜やMIDIファイルにするには、録音よりずっと長くかかります。記譜ソフトを操作し、録音を繰り返し聴く時間まで含めると、セッションの仕事が割に合わなくなってきます。

ドラマーなら、複雑な打楽器のパートを読みやすい楽譜にするほうが、元の曲を覚えるより時間がかかることもありました。そのための時間を、別に取らなければいけません。素早く採譜できる人には、はっきりとした強みがありました。そうでない人は、録音後のまとまった時間を、次の仕事ではなく書き起こしに使っていました。

AI採譜でできること

AI採譜ツールは、録音から自動で楽譜を作ります。セッションの録音ファイルをアップロードすると、同じ音源から楽譜、ギターのタブ譜、MIDI、MusicXMLを作成できます。

Songscriptionで録音を楽譜にするには、録音をドラッグして取り込み、数分待ってから、体裁の整った楽譜をダウンロードします。採譜したい楽器を選ぶと、モデルがミックスからそのパートを分離し、編集できる楽譜にします。バンドやアンサンブルの録音なら、複数の楽器をまとめて採譜する設定を選びます。鍵盤、ギター、ベース、弦楽器、金管楽器、木管楽器、シンセ、歌、ドラムなど、聴き取った楽器ごとにパートを分けて、一度に書き起こします。一つの採譜結果から楽譜、MIDI、MusicXML、Guitar Proを書き出せるので、形式ごとに作業をやり直す必要はありません。

書き出せる形式はツールによって違います。PDFの楽譜だけに対応したものもあれば、タブ譜やMusicXMLには対応していないものもあります。Songscriptionは、一度のアップロードでPDF、MIDI、MusicXML、Guitar Proのすべてに対応します。使い始める前に必要な形式で書き出せるかを確認しておくと、納品時に困らずに済みます。

AI採譜が得意な録音

性能のよいモデルなら、一つの楽器で複数の音が同時に鳴る演奏も採譜できます。コードや音数の多いボイシング、ピアノの両手でメロディーとベースラインを同時に弾く演奏などです。ピアノは、録音の状態や演奏スタイルが違っても、特に安定した結果が得られる傾向があります。バイオリン、フルート、トランペット、サックスなど、主に単音のメロディーを奏でる楽器は、マイクを近づけて録音した音源なら採譜しやすくなります。ギター、ベース、ボーカル、ドラムも、きれいな音源からなら使える結果が得られます。

一つの採譜結果から、PDFの楽譜、Guitar Proファイル、MIDI、MusicXMLを書き出せます。MusicXMLはMuseScore、Sibelius、Finale、Doricoでそのまま開けます。MIDIはLogic Pro、Ableton、FL StudioなどのDAWに直接読み込めます。

複数楽器の採譜機能では、バンドやアンサンブルの録音を一度に処理できるようになりました。ただし、この機能はまだ改良を続けており、エディターで手直しが必要なパートもあります。一つの楽器を採譜する設定でも、複数の楽器の音が重なったライブ録音から、指定したパートを分離して採譜できます。元の音源がきれいで、目的の楽器の音がほかの音と混ざっていないほど、後から直す箇所は少なくなります。きれいなソロ録音なら、十分に学習したモデルで、完成にかなり近い楽譜を作れます。音が入り混じったミックスでは、確認と修正の時間を見込んでください。

AI採譜を使うと録音後の作業はどう変わるか

録音後に数時間かかっていた採譜も、今ではずっと短い時間で済みます。録音をアップロードし、楽器を選び、生成された楽譜を確認します。必要な箇所を直したら書き出します。手間のかかる部分の多くは自動で進みます。

AIツールが登場する前は、急いで採譜するとミスが増え、仕事の評価に響くおそれがありました。丁寧に仕上げれば、セッションの報酬に含まれていない時間がかかります。どちらを選んでも、録音後の負担は積み重なっていました。今は音符の入力の大半を自動で済ませられるので、書き起こす時間を確認に回せます。セッションの合間に採譜をため込まず、受ける仕事を増やすこともできます。急ぎの依頼者に、より短い納期を提示する方法もあります。早く届くことに、依頼者は口にする以上の価値を感じているものです。

採譜が早くなったときの料金の考え方

納品が大幅に早くなれば、今の料金で受ける件数を増やすか、当日納品に追加料金を付けるかを選べます。明日の朝までに楽譜が必要な依頼者は、納期に余裕がある人より高い料金を払うことが多いからです。当日仕上げを慌ただしい特別対応から通常の納品に変えられれば、引き受けられる依頼も変わります。

どう料金に反映するかは、普段の仕事の受け方によって違います。セッションの多い人なら、採譜をためずに、1週間でより多くの案件を進められます。少数の依頼者と単価の高い仕事をしている人なら、楽譜の当日納品を普段から選べるサービスにできます。どちらの場合も、以前は納期や費用について難しい相談が必要だった依頼を、受けやすくなります。

新しく受けられる仕事

以前は手間がかかりすぎた、録音と採譜をまとめたサービスも販売できます。ジャズのセッションを録音したベーシストなら、音源に加えて、仕事で使えるリードシートを数時間以内に納品できます。ギタリストなら、講師や生徒向けにタブ譜付きの録音を販売できます。手作業の採譜では時間がかかりすぎて、継続して受けにくかった仕事です。

採譜だけをサービスにする

採譜を単独で受ければ、新しい依頼者とも仕事ができます。著作権登録のために急いでリードシートが必要なソングライター、サンプルライブラリー用にパート別のMIDIが欲しいプロデューサー、ライブ用の楽譜を準備する音楽監督などです。演奏の録音と採譜を、まとめて依頼してもらえます。

料金の付け方も変わります。手作業の採譜は、引き受けるとしても大きな追加費用が必要でした。AIを使えば、十分な利益を確保した料金で、当日納品に対応できます。ただし、納品前の確認は必要です。Songscriptionは精度の高い採譜ができますが、どんな採譜ツールにも誤りはあります。まれなミスでも、依頼者が見つける前に、自分で見つけて直してください。

MIDIを制作素材として納品する

MIDIを書き出せば、セッションの録音を、制作にすぐ使える素材として納品できます。プロデューサーや作曲家、映像用の音楽を依頼する相手にとっても、購入する理由になります。音源にMIDIファイルを添えると、最初から作り直さずに、細かく編集したり、移調したり、別の用途に使ったりできます。

映像向けの音楽ライブラリーでは、編集の自由度が高いMIDI付きの素材が重宝されます。音源と一緒にMIDIがあれば、パートをどのキーでも使えるからです。映像の音楽担当者が、すでにある音楽に合わせなければいけないときに役立ちます。プロデューサーとの共同制作でも同じです。ベースラインの弾き方は気に入っているけれど、別のシンセの音色を試したい、上にハーモニーを重ねたい、ということがあります。MIDIがあれば、演奏のタイミングやノリを残して音を変えられます。録音後も使い続けられる素材を渡すことで、演奏に加えて制作の面でも仕事に関われます。

AI採譜ツールを選ぶときに確認すること

仕事に取り入れるなら、デモでの仕上がりに加えて、普段の録音で次の点を確認してください。

  • 実際に録音する楽器に対応しているかを確認します。Songscriptionはギター、ベース、ピアノ、ドラム、バイオリン、フルート、トランペット、サックス、ボーカルに対応し、選んだ楽器を採譜します。複数楽器の採譜機能なら、バンドやアンサンブルを一度に採譜できます。弦楽器、金管楽器、木管楽器、シンセも認識します。
  • 必要な形式で書き出せるかを確認します。対応する形式が多いほど、一度のアップロードでさまざまな依頼に応えられます。Songscriptionは一つの採譜結果から、PDFの楽譜、MIDI、ギターのタブ譜、MusicXMLを書き出せます。
  • 普段の録音で精度を確かめます。音数の多いアレンジやさまざまな奏法を使った演奏では、モデルがどこまで学習しているかが結果に出ます。Songscriptionはその両方に対応するよう開発していますが、依頼者に渡す前には確認してください。
  • 採譜後に直しやすいかを確かめます。内蔵エディターがあれば、修正にかかる時間を減らせます。Songscriptionのピアノロールでは、書き出す前に採譜結果を確認して直せます。ミスを修正するたびに、別のアプリへ移る必要がありません。

セッションで使うときの作業手順

  1. 普段どおりに録音し、マルチトラックと一緒に、高音質のステレオミックスも残します。採譜には、きれいな音源が適しています。モデルが音を判別しにくくなるので、コンプレッサーやエフェクトを強くかけた音源は避けてください。
  2. セッションが終わったら、すぐにアップロードします。多くのツールは数分でファイルを処理するので、機材を片づけ終わる前に採譜結果を受け取れます。
  3. 採譜したい楽器を選び、ピアノロールか楽譜表示で結果を確認します。確認の進め方は、AI採譜の精度を上げるためのガイドで詳しく説明しています。
  4. 依頼者の用途に合わせて書き出します。楽譜を読むクラシックやジャズの依頼者にはPDF、パートを重ねたり編集したりするプロデューサーにはMIDI、弦とフレットの番号で読みたいアーティストにはギターのタブ譜を渡します。
  5. 元の録音とまとめて納品します。音源に楽譜を添えると、演奏だけでなく編曲も含めた仕事として評価してもらえます。料金を上げる根拠にもなり、録音後の作業時間は、手作業で採譜していたときよりずっと短く済みます。

今から使い始める理由

こうしたツールを使い始めると、経験に合わせて作業の流れも整っていきます。最初の数件で、どのツールが普段録音する楽器に向いているか、どう直すと早いか、それぞれの依頼者がどの形式を好むかが分かってきます。こうした知識を後から一度に身につけるのは難しいものです。

毎回の納品が安定していることは、依頼者にも伝わります。プロデューサーがリミックス用にベースラインを採譜したいときや、バンドがホーンセクションの楽譜を必要とするときには、前にきちんと使える音源と楽譜を届けてくれた人に、また声をかけます。

精度がもっと上がるのを待っている間は、仕事で使いこなすための経験も積めません。Songscriptionの単一楽器の採譜は、すでにセッションの多くの仕事で使える精度になっています。普段の作業のどこに取り入れられるかは、実際の案件で使うと分かります。セッションや採譜を主な仕事にしているなら、採譜を仕事にする人向けのページを参考にしてください。

納品前の確認も含めてサービスにする

速く正確に採譜できれば、納期を短くし、納品形式を増やし、以前は引き受けにくかった依頼にも対応できます。セッションの報酬に埋もれていた採譜を、依頼者が成果を見て料金を払う一つのサービスとして扱えます。

急いでMIDIを用意したい映像音楽の作曲家から、翌朝までに楽譜が必要なライブの出演者まで、さまざまな現場で使えます。ただし、最初の採譜結果は完成に近い下書きです。選んだ一つのパートを取り出す場合も、複数楽器の採譜機能でバンドやアンサンブルの全パートをまとめて採譜する場合も、仕上げの確認は残ります。確認の時間を料金に含め、実際にチェックしたものを納品してください。その作業まで含めて早く届けられることが、サービスの強みになります。

よくある質問

セッションミュージシャンはAI採譜で何ができますか?

録音から自動で楽譜を作るので、演奏を楽譜やタブ譜、MIDIにまとめる作業が、これまでよりずっと短い時間で済みます。Songscriptionでは録音をドラッグして取り込み、楽器を選んで数分待つと、体裁の整った楽譜をダウンロードできます。同じ採譜結果から、楽譜、MIDI、MusicXML、Guitar Proの各形式で書き出せます。採譜にかかる時間が減れば、受けられる仕事を増やしたり、納期を短くしたりできます。楽譜の作成も、依頼者に成果が見える有料サービスとして扱えます。

バンド全体の録音もAIで採譜できますか?

はい。アップロード時に複数の楽器をまとめて採譜する設定を選ぶと、Songscriptionがバンドやアンサンブルの録音を一度に採譜します。鍵盤、ギター、ベース、弦楽器、金管楽器、木管楽器、シンセ、歌、ドラムなど、聴き取った楽器ごとにパートを分けます。各パートを並べた楽譜、複数トラックのMIDI、MusicXML、PDFで書き出せます。書き出す前に、エディターで各パートをひと通り確認してください。一つのパートだけをできるだけきれいに採譜したいときは、その楽器を選びます。モデルがミックスから選んだ楽器の音を分離して採譜します。どちらの方法でも、元の録音がきれいなほど、後から直す箇所は少なくなります。

依頼者にはどのファイル形式で納品できますか?

Songscriptionでは、一度のアップロードからPDFの楽譜、MIDI、MusicXML、Guitar Proを書き出せます。MusicXMLはMuseScore、Sibelius、Finale、Doricoでそのまま開けます。MIDIもLogic Pro、Ableton、FL StudioなどのDAWに直接読み込めます。ただし、最初の採譜結果は完成した楽譜ではなく、完成に近い下書きです。納品前に、内蔵のピアノロールエディターでひと通り確認してください。

著者について

Andrew Carlins

著者

Andrew Carlins

Songscription共同創業者・CEO

アンドリューは、弾きたい曲の楽譜が見つからないことにうんざりしていた音楽仲間数人と、スタンフォード大学でSongscriptionを共同創業しました。子どもの頃からピアノとバリトンサクソフォンを演奏し、ミュージカルの舞台にも立っていました。もう何年も舞台には立っていませんが、今も腕は鈍っていないつもりです。録音から音を拾って楽譜にすることについて書いています。

チームについて詳しく見る

同じテーマの記事を読む