曲の中の楽器を聴き分けるには、一度に一つの楽器に集中して、何度か聴き直します。各パートがミックスのどのあたりに聴こえるかを知っておくと、音を追いやすくなります。音が細かく動くところは、再生速度を落としてください。そのあと、パートごとに採譜した楽譜で、聴き取った音を確かめます。SongscriptionのMulti-Instrumentモードは、聴き取れた楽器ごとに譜表とMIDIトラックを分けて採譜します。ドラムやベースから、ギター、キーボード、管楽器、弦楽器、ボーカルまでが対象です。
耳で音を拾う力を鍛えます。採譜した楽譜は、聴き取った音の答え合わせに使います。両方を使うと、「歌と、ほかにもいろいろな音が聴こえる」という状態から、ベースラインや2本目のギター、その下でコードを伸ばすオルガンまで聴き分けられるようになります。耳コピには、こうして各パートを聴き取る力が必要です。
曲の中の楽器を聴き分けにくい理由
ミックスでは、楽器の音がなじむように調整されています。作り手は、各楽器が互いを支えるように音を配置します。同じ音域で重なったり、ボーカルの後ろに隠れたり、同じ拍で鳴ったりするのはそのためです。自然に耳が向くのは、メロディーと目立つリズムです。ほかの音を聴き取るには、どこに耳を向けるかを覚え、各パートに絞って聴く練習を重ねます。
耳コピを始めたばかりのころは、一度に全部を聴こうとして、結局ボーカルばかり追ってしまいがちです。聴く対象を分けると、ほかのパートも追いやすくなります。
一度に一つの楽器に集中して聴く
曲を何度か通して聴き、そのたびに追う楽器を一つ決めます。ほかの音には意識を向けないようにしてください。まずは曲の土台になるドラムとベースから始め、ギター、キーボード、ボーカルへと進みます。聴きながら、フレーズを口ずさんだり、リズムを叩いたりしてみます。歌って再現できなければ、まだフレーズをつかみきれていません。
一般的なバンドの曲なら、次の順番で聴けます。
- 拍を数えながらドラムを聴き、バックビートを見つけます。ハイハットが開くところや、フィルが入る位置にも耳を向けます。
- ベースを追い、コードが変わるたびに一番低い音を口ずさみます。その音がコードのルートになっていることが多いです。
- リズムギターやキーボードで、コードを鳴らすリズムを聴きます。弦をまとめて弾くのか、一音ずつ弾くのか、伸ばすのか、短く切るのかを聴き分けます。
- リードのフレーズや合いの手を聴きます。ボーカルに応えるリフや短いフレーズ、管楽器の歯切れのよい音、シンセの印象的なフレーズを探します。
- 背景でコードを伸ばすオルガン、ストリングス、シンセのパッド音を聴きます。気付きにくいパートですが、曲の音に厚みを出していることがよくあります。
- 最後にボーカルを聴きます。主旋律はすでに耳に入っているので、その周りのハーモニーやバックボーカルを追います。
耳コピの力を伸ばす練習では、この聴き分けを速くするための、音程とコードの練習手順を紹介しています。
ミックスの中で各楽器が聴こえる位置
楽器には、それぞれよく使う音域と、ミックスの中で配置されやすい位置があります。ベースとキックドラムは低域で、ギター、キーボード、ボーカルは中域で重なります。シンバル、ハイハット、明るいシンセ音は高い帯域です。この目安を知っておくと、耳を向ける場所を絞れます。下の表には、採譜後にSongscriptionが各パートをどう表示するかもまとめています。
| 楽器 | ミックスの中の位置 | 聴くところ | Songscriptionでの表示 |
|---|---|---|---|
| ドラム | キックは低域、スネアは中域、ハイハットとシンバルは高域 | バックビート、ハイハットのパターン、次のセクションに入る前のフィル | 一般的なドラム譜で書かれたパート |
| ベース | ピッチのあるパートでは最も低く、キックより下に聴こえることが多い | コードが変わるときの音と、そこから次の音までの動き | 独立した譜表。ベースを選んで採譜し直すと、ベースだけに絞れます |
| リズムギター | 中域の低め。左右どちらかに寄せてあることが多い | コードを鳴らすリズムとストラムのパターン | ギターのパート。ギターを選んで採譜し直すとタブ譜にできます |
| キーボード | 広い音域。左手は低域、右手は中域から高域 | 伸ばしているコード、伴奏のリズム、合間に入るメロディー | 左手と右手に分かれた大譜表 |
| リードギターやシンセ | 中域の高め。歌の合間に入ることが多い | ボーカルに応えるリフや印象的なフレーズ | 楽譜内の独立した譜表 |
| 管楽器や弦楽器 | 中域から高域。同じフレーズを重ねたり、音を伸ばしたりすることが多い | 短く切る音、背景で伸ばすコード、主旋律とは別に動くメロディー | 金管楽器、木管楽器、弦楽器の別々のパート |
| ボーカル | 中央。通常は最も大きく聴こえるパート | 主旋律と、その周りのハーモニー | 歌のパートをまとめた一つのボーカルトラック |
左右の配置は、よくある傾向です。曲の作り手によってミックスは違うので、楽譜でも確かめると聴き分けの助けになります。
再生速度を落として聴く
ピッチを変えずに再生速度を落とすと、速いフレーズの音と音の間隔が広がり、一音ずつ聴き取りやすくなります。ドラムのフィルは一打ずつ、ギターの速いフレーズは一音ずつ追えます。輪郭がつかみにくかったベースラインも、口ずさめるメロディーとして聴こえてきます。音数の多いところは、再生速度を半分くらいまで落として音を拾います。それから少しずつ元の速さに戻し、元の速さでも聴き取れるかを確かめてください。
繰り返す範囲は、2〜4小節ほどに区切ります。長い範囲を繰り返すと、注意がボーカルに戻りやすくなります。短く区切れば、拾いたいパートに集中できます。楽器を使って音を探すときは、何度も再生を止めるより、再生速度を落とし、小さな音で合わせて弾いてみてください。
採譜した楽譜で答え合わせをする
まず耳でパートを拾い、そのあとMulti-Instrumentモードで曲を採譜して比べます。聴き取れた楽器ごとに、譜表とMIDIトラックが分かれます。採譜結果の再生速度を変え、一つの譜表を目で追いながら聴くと、合っていたところも、拾い違えたところも分かります。違っていた箇所を、次の練習で聴き直します。
次の手順で繰り返します。
- 楽器を一つずつ聴き、聴こえたと思う音を書き留めるか、弾いてみます。
- 曲をアップロードするか、YouTube、TikTok、Instagramのリンクを貼り付け、Multi-Instrumentモードで採譜します。
- 録音を聴きながら、拾いたい楽器の譜表を追います。自分が聴き取った音と違う箇所に、すべて印を付けます。
- 印を付けた小節の再生速度を落とし、楽譜に書かれた音が聴こえるか、もう一度確かめます。
採譜結果も間違うことがあります。特に、二つの楽器が同じ音域で重なっているところは注意が必要です。聴き取った音と楽譜が食い違うときは、最後は録音で判断します。録音に戻って確かめる習慣も、練習になります。答え合わせの前に耳コピの手順を詳しく知りたいときは、耳で聴いて採譜する方法を参照してください。
弾きたい楽器のパートを覚える
ミックスの中で自分のパートを聴き取れるようになったら、単一楽器モードで、そのパートだけに絞って採譜します。ギター、ベース、バイオリン、フルート、トランペット、サックス、ドラム、ボーカル、ピアノなどから楽器を選びます。モデルは選んだ楽器だけを聴き取り、ミックスのほかの音は除外します。ピアノ以外の単一楽器モードはすべてベータ版なので、結果をひととおり確認してください。
あとは、楽譜を見ながら再生速度を落とし、短い範囲を繰り返してさらいます。ベースを弾くなら、ベースラインの採譜方法で、低音をはっきり聴き取れる音源の準備や、タブ譜と五線譜への書き出しを確認できます。メロディーの音を手早く知りたいときは、曲で使われている音を調べる方法で、耳コピとAIによる採譜を比べています。
ステム分離ツールとの違い
MoisesやDemucsのようなステム分離ツールは、曲の音声をボーカル、ドラム、ベースなどのトラックに分けます。一つのパートだけを鳴らせるので聴き取りやすくなりますが、音符は一音ずつ自分で拾う必要があります。採譜では、その音符を楽譜で確認できます。Songscriptionには、分離した音声ステムを書き出す機能はありません。各パートを楽譜とMIDIにします。
すでに分離したステムがあるなら、それを採譜に使えます。分離済みのトラックを一つ、単一楽器モードに入力すると、音をかなりはっきり拾って採譜できます。
よくある質問
耳コピしたいのですが、いろいろな楽器の音が重なっていて聴き分けられません。各パートを聴き取るにはどうすればいいですか?
一度に一つの楽器に絞り、ベースやドラムからボーカルへと順に聴いていきます。ミックスの中で各パートがどのあたりに聴こえるかをつかみ、音が細かく動くところは再生速度を落とします。楽器で弾く前に、そのフレーズを歌ってみてください。そのあと、聴き取れた楽器ごとに譜表を分けて採譜するSongscriptionのMulti-Instrumentモードで答え合わせをします。
曲の中の楽器を判別して、パートごとに取り出せるツールはありますか?
SongscriptionのMulti-Instrumentモードなら、曲全体を聴き取り、判別した楽器ごとにパートを分けます。キーボード、ギター、ベース、弦楽器、金管楽器、木管楽器、サックス、シンセ、歌声、ドラムに対応し、楽譜とマルチトラックMIDIを作れます。MoisesやDemucsのようなステム分離ツールは音声を分けますが、音符は自分で聴き取る必要があります。
耳コピの練習で、採譜された楽譜を見るのはずるいですか?
答え合わせに使うなら、耳コピの練習になります。まず耳でパートを拾い、そのあと採譜結果と比べて、違っていたところを確かめます。ベースの経過音を聴き逃していたり、リズムを均等だと思い込んでいたりした箇所が分かります。先に楽譜を見てから聴くと、自分の耳だけで拾う練習を飛ばしてしまいます。
ほかの音に埋もれたベースラインを聴き取るにはどうすればいいですか?
音量を少し上げて、ヘッドホンか低音がきちんと出るスピーカーで聴きます。スマートフォンの小さなスピーカーでは、低い音がほとんど出ません。ベースはキックドラムと動きが合うことが多いので、キックを追ってみてください。コードが変わるたびに、聴こえる一番低い音を口ずさみます。答え合わせには、Songscriptionの単一楽器モードでベースを選びます。ほかの楽器を除外して、ベースだけを聴き取ります。
曲の再生速度を落とすと、楽器の音を聴き取りやすくなりますか?
再生速度を落とすと聴き取りやすくなります。特に速いフレーズでは有効です。ピッチを変えずにゆっくり再生すると、速い音の並びやドラムのフィル、音数の多いギターパートを追いやすくなります。Songscriptionでは採譜した楽譜の再生速度を変えられます。一つの譜表を目で追いながら聴くと、聴こえる音と楽譜に書かれた音を結び付けやすくなります。
聴き取った音を確かめながら進める
曲の中の楽器を聴き分ける力は、手順を決めて練習し、結果を確かめることで伸ばせます。聴く楽器を一つに絞り、各パートが聴こえる位置をつかみ、難しいところの再生速度を落とします。以前は、答え合わせには先生に聴いてもらうか、市販の楽譜を探す必要がありました。楽譜が見つからない曲もあります。今は、覚えたい録音そのものを採譜し、各パートを別々の譜表で確認できます。
耳で音を拾ってから楽譜と比べ、違っていたところをもう一度聴きます。この繰り返しで、聴き逃した音を確かめられます。SongscriptionのMulti-Instrumentモードでは曲全体の答え合わせができ、単一楽器モードでは覚えたいパートに絞って採譜できます。いつも一部しか追えていなかった曲で、どんなパートが重なっているかを確認できます。