チュートリアル採譜Andrew Carlins•読むのに約9分

耳コピの進め方とAIを使うタイミング

耳コピには時間がかかりますが、道具に頼るだけでは身につかない力を鍛えられます。自分で音を拾う手順と、耳コピで得られる力、AIに先に音を書き起こさせるほうがよい場面を紹介します。

耳コピを順に進める方法と、AIに最初の書き起こしを任せるタイミング

この記事は楽器別の採譜ガイドの一部です。

耳コピは、曲を聴いて音を探り、書き留める作業です。キーとテンポを調べたら、目立つパートを短いフレーズごとに拾っていきます。再生速度を落とし、音を歌って高さを確かめてから、楽器でその音を探します。時間がかかり、もどかしくなることもありますが、近道では身につかない聴く力を鍛えられます。

耳を鍛えるために取り組む一方で、時間や曲の複雑さに合わせてAIを使う選択もあります。

耳コピの進め方

すべての音を一度に拾おうとせず、聴き取りやすいメロディやベースから順に進めます。

まずキーとテンポを調べる

音を書き始める前に、曲の手がかりをつかみます。鼻歌を歌いながら、落ち着く感じのする中心の音を探します。曲に合わせて拍を取り、テンポと小節の1拍目も確かめます。

曲の大部分はそのキーのスケールに収まるので、キーが分かると候補の音をかなり絞れます。その後の作業も速くなります。

一つのパートずつ音を拾う

まずは一番聴き取りやすいパートを選び、ほかの音はいったん脇に置きます。メロディかベースであることが多いでしょう。数音ずつの短いフレーズに区切って進めます。

一つひとつの音を歌うか鼻歌でなぞって高さを頭に残し、楽器で同じ音を探して書き留めます。ベースラインは音が聴き取りやすいことが多く、ほかのパートを支えるコードも分かるので、最初に取り組むパートとして向いています。

再生速度を落として繰り返し聴く

速いパッセージは元の再生速度では聴き取れなくても、半分の再生速度にすると音を追えるようになります。ピッチを変えずに再生速度を落とせるプレーヤーを使い、取り組んでいる4〜5秒の部分を聴き取れるまで繰り返します。この習慣があると、同じ1時間でも、もどかしいだけで終わらず作業を進められます。

パートを重ねる

メロディとベースを書き留めたら、その間のハーモニーを加え、内側の声部も拾います。一つのパートを書き終えるたびに録音と照らし合わせてから、次に進みます。最初の間違いに気づかないまま音を重ねずに済みます。骨組みから少しずつ音を足すと、取り組みやすくなります。

耳コピで身につく力

音を拾って楽譜に書き留める過程で、聴く力も鍛えられます。

  • 音の高さを聴き取る力。 聴こえた音を音符に結びつける作業を繰り返すと、2つの音の高さの間隔である音程を聴き取る練習になります。続けるうちに、楽器で確かめなくても音が分かるようになります。
  • リズムの正確さ。 音が入る位置を正確に探るには、普段は聴き流している拍の細かな区切りまで数え、感じ取る必要があります。
  • ハーモニーの理解。 ベースラインからコードを聴き取り、コードの移り変わりを追うと、曲の組み立てが感覚として分かってきます。その感覚は演奏や作曲にも生かせます。
  • 記憶力と集中力。 フレーズを頭に残したまま書き留める作業を繰り返すと、記憶力と集中力も鍛えられます。

耳コピに時間をかけるのは、機械に音を聴き取らせても、こうした力は身につかないためです。

AIを使うタイミング

耳を鍛えることが目的でないときには、AIを使うほうが適した場面もあります。

  • 速さが必要なとき。 明日のライブに向けて譜面が必要なら、耳を鍛えることは後回しです。AIなら数分で精度の高い下書きを作れるので、そこから修正を加えます。
  • 音が重なりすぎているとき。 音が密集したコードの中の音を聴き分けたり、同じ音域の2つの楽器を分けて聴いたりする作業は、経験を積んだ人にも難しいものです。AIのモデルは、自分で聴き分けるのが難しい複数の音を処理できます。
  • 答え合わせをしたいとき。 一部分を耳コピしてからAIの書き起こしと比べると、聴き逃した音を見つけられます。耳を鍛えながら、結果も確かめられる使い方です。

取り組みやすい曲では耳コピで力をつけ、音が複雑な曲や時間がないときには最初の書き起こしを道具に任せます。多くの演奏者にとって、両方を組み合わせるのが実用的です。

自動で書き起こす手順は、採譜の方法をまとめた記事と、詳しい音声からMIDIを作るガイドで紹介しています。AIの出力はあくまで下書きです。結果を確認して修正するときにも、耳コピで鍛えた耳を使います。

耳コピとAIを組み合わせる

耳コピでは聴く力を鍛えられます。AIは、聴く力が身についていて時間を節約したいときや、自分で音を拾うには複雑すぎる曲に取り組むときに役立ちます。両方をうまく使う演奏者は、AIに手間のかかる作業を任せながら、自分でも音を聴いて確かめています。

よくある質問

耳コピはどうやって進めますか?

パートごとに音を聴き取ります。まずキーとテンポを調べ、目立つパートから短いフレーズごとに音を拾います。メロディかベースから始めるとよいでしょう。再生速度を落とし、一つひとつの音を歌うか鼻歌で確かめ、楽器で探して書き留めます。シンプルなパートから順に書き留め、録音と照らし合わせてから次に進みます。

AIが使えても耳コピをする価値はありますか?

耳を鍛えるために、やる価値があります。耳コピほど直接的に、音の高さを聴き取る力、リズムの正確さ、曲の組み立てを理解する力を鍛えられる方法はありません。AIは最初の書き起こしが速く、精度も高いことが多いものの、耳は鍛えられません。上達のために耳コピをし、早く結果が欲しいときや照らし合わせる下書きが欲しいときにはAIを使う人も多くいます。

耳コピで一番難しいところはどこですか?

難しいのは、メロディとベースの間にある声部や、音が重なったコードの聴き取りです。単独のメロディは多くの演奏者にとって取り組みやすい一方、音が密集したコードの中の音を聴き分けたり、同じ音域の2つの楽器を分けて聴いたりするところで行き詰まりがちです。再生速度を落とすと聴き取りやすくなります。そうした部分はAIに先に書き起こさせると、苦労を大きく減らせます。

耳コピの代わりにAIを使うのはどんなときですか?

耳を鍛えることより速さを優先したいとき、音が重なりすぎて確実に聴き分けられないとき、白紙から始める代わりに精度の高い下書きを修正したいときにはAIを使います。答え合わせにも使えます。一部分を耳コピしてからAIの書き起こしと比べると、聴き逃した音を見つけられます。取り組みやすい曲で力をつけることが目的なら、自分で耳コピするほうが適しています。

著者について

Andrew Carlins

著者

Andrew Carlins

Songscription共同創業者・CEO

アンドリューは、弾きたい曲の楽譜が見つからないことにうんざりしていた音楽仲間数人と、スタンフォード大学でSongscriptionを共同創業しました。子どもの頃からピアノとバリトンサクソフォンを演奏し、ミュージカルの舞台にも立っていました。もう何年も舞台には立っていませんが、今も腕は鈍っていないつもりです。録音から音を拾って楽譜にすることについて書いています。

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