曲を採譜してから楽譜を見ながら練習します。ふつうは、この二つを別々に進めます。同時に進めると、フレーズがどう成り立っているかを理解しながら、手にもその動きを覚えさせられます。ただ繰り返し弾いたり、聴き流したりするよりも、曲が記憶に残りやすくなります。
私たちはAI採譜ツールのSongscriptionを作っています。Songscriptionでは、音源をアップロードし、採譜結果を確認して弾ける形に直していきます。ほかの方法で採譜するときも、同じように進められます。
採譜と練習を一緒に進める理由
先に採譜を済ませて後から練習すると、曲を理解する時間と手の動きを覚える時間が分かれます。同時に進めれば、コードの形を手で覚えながら、なぜそのコードに変わるとそう聴こえるのかも確かめられます。
音を書き留めるには、曲の中で何が起きているかをゆっくり聴き取る必要もあります。何気なく聴いていると気づかなかった内側の声部(メロディーとベースの間にある音の流れ)の動きや、ストレートだと思っていたリズムのシンコペーションも、楽譜にすると見えてきます。そうした細部に気づきながら覚えると、耳だけで曲を覚えるときとは違った形で記憶に残ります。
始める前に用意するもの
用意するのは、音がきれいに録れた曲のオーディオファイルと、AI採譜ツールです。できるだけ良い録音を選んでください。スタジオ音源はライブ録音より各楽器の音が明瞭で、分かれて聴こえることが多いため、通常はこちらが向いています。MP3、WAV、M4Aを使えますが、音質の良いファイルほど採譜の精度も上がる傾向があります。音源の選び方は、AI採譜の精度を上げるためのガイドで詳しく紹介しています。
Songscriptionは、オーディオを数分で楽譜、ギターのタブ譜、MIDIに変換します。さまざまな楽器に対応しており、複数の音が混ざった音源から弾きたいパートを選んで、その楽器だけを採譜できます。アレンジの中で自分のパートがどう聴こえるかを確かめながら、練習できます。Multi-Instrumentを使えば、バンドやアンサンブルの全パートを一度に採譜できます。音楽理論の専門知識やインストールは必要ありません。ファイルをアップロードしたら始められます。
曲を採譜しながら覚える手順
ステップ1:音源をアップロードして採譜する
ファイルをアップロードし、出力形式を選びます。楽譜、ギターのタブ譜、MIDIから、読み慣れた形式や練習方法に合うものを選んでください。採譜が終わっても、すぐには弾き始めず、まず楽譜を確認します。間違った動きが手に染みつく前に見ておきます。
ステップ2:弾く前に採譜結果を確認する
Songscriptionの採譜は、多くの場合そのまま練習に取りかかれるくらいの精度です。それでも、先にざっと確認しておくとよいでしょう。人が採譜してもAIが採譜しても、ときには小さな間違いが入ります。間違った弾き方が手に染みついてから直すより、早めに見つけるほうが簡単です。
まずは調号と拍子記号を確認します。後に続く譜面全体に関わるので、最初に確かめたいところです。次に、明らかにおかしく見えるところがないか見ていきます。妙に複雑に見えるフレーズ、同じように聴こえる別の箇所と譜面が違う部分、楽器の音域から外れた音などが目安です。完璧を目指す必要はありません。練習を始める前に、大きな間違いがないか確かめます。
ステップ3:難しいところを見つける
練習に入る前に採譜結果を通して読み、今の自分にとって難しそうなフレーズを探します。目を引くところより、そこを優先して練習します。
何でも印をつけるのではなく、実際につまずきそうな箇所をいくつか選びます。始めたばかりなら基本的なコードの切り替え、弾き慣れているなら特定のソロや拍の区切り方が変わったフレーズなどです。印をつけすぎると、どこに集中すればよいか分かりにくくなります。
セクションのつなぎ目にも目を向けてください。元の速さでは滑らかに聴こえても、ゆっくり弾くと練習が必要な動きが見つかることがあります。難しいところが分かったら、まずはそこだけを取り出してさらいます。曲全体を通す前に練習しておくと時間を節約でき、同じ場所で何度もつまずいて悪い癖がつくのも防げます。
ステップ4:曲の頭から通さず、短く区切って練習する
新しい曲を覚えるとき、頭から弾き始めて、つまずくところまで進むやり方をしがちです。それでは、易しい冒頭に最も時間をかけ、難しい部分にかける時間が最も短くなってしまいます。
曲を短いフレーズに分けてみてください。先ほど見つけた一番難しいところから始め、十分に弾けるようになってから次へ進みます。一度止まらずに弾けただけではなく、ゆっくりしたテンポで、毎回正確にきれいに弾ける状態が目安です。楽譜を見ながら、曲が自然に落ち着くところでフレーズの切れ目を決め、それぞれを練習します。
フレーズごとに安定して弾けるようになったら、つなぎ目を練習します。一つずつ繰り返しているときには気づかなかったタイミングやフィンガリングの問題が、次の部分へ移るときに見えてきます。つなげて弾くうちに、曲全体の形もつかめてきます。
ステップ5:ピアノロールとMIDIで耳を鍛える
Songscriptionは採譜のたびにピアノロールを自動生成します。音符が一つひとつ視覚的に並ぶので、五線譜では音符が密集して見えるところも把握しやすくなります。再生しながら目で追うと、見ている音符と、そこで聴こえるはずの音を結びつける耳の練習になります。MIDIをDAWに書き出せば、さらに細かく操作できます。ピッチを変えずに複雑なフレーズの再生速度を落としたり、別のキーに移調したりしながら、パートに慣れていけます。
ステップ6:採譜、演奏、修正を繰り返す
曲を覚える作業は、順番に進めて終わりではありません。フレーズを弾いて元の録音と比べ、合わないところを見つけて直します。この繰り返しの中で覚えていきます。
音がおかしいと感じたら、いったん止めて楽譜を見直します。耳だけで覚えるときと違い、弾いている間も楽譜を見られます。書かれている音と自分が弾いている音を比べれば、当てずっぽうではなく、確かめたうえで弾き方を変えられます。楽譜と楽器を行き来しながら、一つひとつ覚えていきます。
フレーズの弾き方が分かったら、元の録音と合うまで繰り返し、それから前後の部分とつなげます。セクション全体を通して、うまくいかないところが自然に直るのを待つより、その箇所を直してからセクション全体を通すほうが早く進みます。
練習を進めるためのヒント
- 耳でよく知っている曲から始めます。 どんな音になるか分かっていると、採譜結果や自分の演奏が元の曲と違うところに気づきやすく、早い段階で自信にもつながります。
- フレーズがつかめないときは、再生速度を落とします。 元の速さで急いで弾くより、ゆっくり練習するほうが手の動きも滑らかになりやすくなります。
- 曲全体を通すより、短い部分を繰り返します。 曲を一度つまずきながら通すより、1フレーズを何度も繰り返すほうが練習になります。
- 確認するときだけでなく、弾いている間も楽譜を見えるところに置きます。 演奏しながらその場で楽譜を見直せます。
- 何度か弾いても違和感が残るときは、録音に戻ります。 頭の中で聴こえている音と、実際の録音が食い違っていることもあります。
- ピアノでは、演奏をチェックするツールを使います。 Anything PianoはiPhoneやiPadにパートをピアノロールで表示し、曲を一つずつ練習できる部分に分けます。弾いている音をマイクで聴き取り、Fingeringをオンにすると音符に指番号が表示されます。フレーズを前よりうまく弾けているか、手探りで判断せずに済みます。
まとめ
採譜しながら曲を覚えると、最初の確認時だけでなく、練習中もずっと楽譜を見られます。譜面と自分の演奏を比べて直す作業を繰り返すことで、楽譜を読むだけ、あるいは耳だけを頼りにするより効果的に覚えられます。
時間の使い方も変わります。採譜に半日かける代わりに数分で済めば、練習時間のほとんどを、聴こえる音に手の動きを合わせる作業に使えます。採譜という機械的な作業をツールに任せ、ゆっくり確かめながら弾く時間を取れます。
よくある質問
曲を採譜しながら弾けるようになるには?
音がきれいに録れた音源をアップロードして採譜し、弾き始める前に楽譜を確認します。難しいところを見つけたら、曲の頭から通すのではなく、短く区切って練習します。弾くときも楽譜を見えるところに置いてください。フレーズを弾いて元の録音と比べ、合わないところを見つけて直します。この繰り返しが上達につながります。
弾き始める前に採譜結果を確認するのはなぜですか?
小さな間違いは、間違った弾き方が手に染みついてから直すより、早めに見つけるほうが簡単です。まずは後に続く譜面全体に関わる調号と拍子記号を確認し、明らかにおかしく見えるところがないか見ていきます。完璧を目指すのではなく、練習を始める前に大きな間違いがないか確かめます。
ピアノロールは曲を覚えるときにどう役立ちますか?
Songscriptionは採譜のたびにピアノロールを自動生成します。音符が一つひとつ視覚的に並ぶので、五線譜では音符が密集して見えるところも把握しやすくなります。再生しながら目で追うと、見ている音符と聴こえる音を結びつける耳の練習になります。ピッチを変えずに複雑なフレーズの再生速度を落とせば、元の速さではつかみにくい小節も覚えやすくなります。
