ピアノのレッスンアプリで練習できるのは、収録されている曲だけです。弾きたい曲が見つからないときは、録音そのものを練習に使えます。音源から音符を検出して、上から音符が流れてくるピアノロールに変換します。再生速度を落とせば、音符を見ながら曲に合わせて弾けます。どのアプリにも追加されそうにない曲でも、この方法なら練習できます。
レッスンアプリで最もよく行き当たるのが、曲が見つからないという壁です。レッスンをいくつか終えて、そろそろあの曲を弾きたいと思ったのに、アプリには入っていません。曲の追加を待たずに練習する方法はあります。ただ、基礎から順に学びたいときには、専用のレッスンアプリが向いています。
アプリに弾きたい曲がない理由
レッスンアプリは、曲を選び、使用の許可を得て、教材として収録しています。1曲を追加するにも、アレンジを作り、難易度を設定し、権利の手続きを済ませる必要があります。曲数には限りがあり、追加される時期も運営側の予定で決まります。たとえば、flowkeyが案内している収録曲は1,500曲以上、Skooveは約800曲です。まとまった数ではありますが、世の中にある曲全体から見れば、ごく一部です。定番から少し離れた曲になると、特定のアプリに収録されている可能性はぐっと下がります。アルバムの中のあまり知られていない曲、英語以外のヒット曲、礼拝で演奏するアレンジ、特定のライブ版やアコースティック版、自分で作った曲などがそうです。
各アプリにも、弾きたい曲をリクエストする方法はあります。ただし、送ったあとは待つことになります。Simply Pianoでは、検索しても見つからない曲をボタンからリクエストできます。チームは可能な範囲で曲を追加しますが、希望した曲が選ばれる保証はありません。Androidでは、代わりにサポートへメールを送る必要があります。flowkeyとSkooveも、サポート窓口でリクエストを受け付け、人気のある曲を定期的な更新に取り入れています。時間をかけて収録曲を増やす仕組みとしては妥当です。でも、今夜この曲を練習したい、というときには間に合いません。
Synthesiaは収録曲に縛られないので、この問題を解決できそうに見えます。ただ、別の準備が必要です。上から流れる音符を見やすく表示して、幅広い曲を再生できますが、録音を聴き取るわけではありません。自分で用意したMIDIファイルやMusicXMLファイルを読み込んで使います。完成したMIDIファイルが出回っていない曲なら、ファイルを探すか、購入するか、自分で作らなければなりません。自作するには、楽譜作成ソフトに音符を入力したり、そこからファイルを書き出したりします。結局、練習を始めるための準備は自分でする必要があります。この違いは、SongscriptionとSynthesiaの比較で詳しく説明しています。
録音から練習用のピアノロールを作る
誰かが作ったアレンジを探す代わりに、手元の録音から練習用のデータを作れます。採譜ツールに音源を読み込ませると、どの音が鳴っているかを検出してくれます。
Songscriptionでは、MP3、WAV、M4Aなどの音声ファイルをアップロードするか、YouTubeなどの動画へのリンクを貼り付けます。AIが音符を検出し、曲に合わせて弾けるピアノロールに変換します。インストールは不要で、ブラウザ上で使えます。音符が鍵盤に向かって上から流れてくる、Synthesiaで広まった表示形式です。録音から作るので、先にMIDIファイルを探す必要はありません。仕組みについては音声からピアノロールを作る方法で説明しています。この表示に慣れていない場合は、ピアノロールの読み方も参考になります。
自動採譜の精度は、音源によって変わります。音がはっきりしたピアノの録音や、シンプルなソロ演奏のほうが、多くの楽器が重なるバンド全体の録音よりも正確に採譜できます。無料では30秒まで採譜できるので、有料で使う前に、練習したい音源で結果を聴いて確かめられます。有料では曲全体を採譜できます。収録曲の中から選ばなくても、手元の音源で練習を始められます。
再生速度を落として片手ずつ練習する
ピアノロールができたら、再生速度と左右の手の表示を使って練習します。新しい曲をさらうときに役立つのが、この二つです。
一つ目は、再生速度を落とす機能です。ピッチを変えずに、元の速さよりも大幅に遅く再生できます。速いフレーズも音の高さはそのままなので、音符を読みながら弾ける速さでさらえます。難しいところは無理なく弾ける再生速度にして、手になじんできたら少しずつ上げます。昔からある練習方法を、そのままプレーヤーで使えます。遅くしてもピッチが変わらない仕組みは、ピッチを変えずに音楽の再生速度を落とす方法で説明しています。
二つ目は、左右の手の色分けです。右手と左手が別の色で表示されるので、どちらの手で弾く音かをひと目で確認できます。新しい曲を覚えるときによくするように、片手ずつさらってから両手を合わせられます。この練習方法については、ピアノロールを使った練習ガイドで詳しく紹介しています。
どちらの機能も、Songscriptionのウェブ版とモバイルアプリで使えます。ノートパソコンで練習しても、鍵盤の横にスマートフォンを置いて使ってもかまいません。楽譜を読んで練習するなら、ウェブ版から見やすいPDFを書き出せます。ピアノロールの代わりに五線譜を使ったり、両方を見比べたりできます。AIを使った練習については、AIでピアノ曲を効率よく覚える方法でも取り上げています。
レッスンアプリを選んだほうがよいとき
これからピアノを始めて、楽譜の読み方や演奏の基礎を一から身につけたいなら、順序立てて学べるレッスンアプリが向いています。flowkey、Simply Piano、Skooveは、そのための教材を段階ごとに用意しています。Songscriptionは、こうした基礎を教えるアプリではありません。
- やさしい曲や基本的な考え方から、学ぶ順番が決まっています。準備ができていない段階で、難しい内容に進むことを避けられます。
- 楽譜の読み方、リズム、音楽理論を、レッスンに沿って学べます。採譜ツールには、このような指導はありません。
- 多くのアプリは、端末のマイクで演奏を聴き取り、音の間違いやリズムのずれを知らせます。
- 手の構え方やフィンガリングなども、知っていることを前提にせず、基礎から教えます。
このうち、演奏を聴いて間違いを知らせる機能は、レッスンアプリ以外でも使えるようになっています。Songscriptionと同じチームが作ったAnything Pianoは、iPhoneとiPadで使えます。収録曲から選ぶ代わりに、録音からピアノのパートを作り、楽譜ではなくピアノロールで表示します。演奏中はマイクで音を聴き取り、表示された音にどれくらい合っているかを示します。アコースティックピアノでもMIDIキーボードでも使えるので、好きな音源を持ち込んで、弾いた結果を確認しながら練習できます。曲はいくつかの部分に分かれ、一つずつ練習を進めると、その進み具合が表示されます。ピアノロールに指番号を表示して、どの音をどの指で弾くかを確認することもできます。ただし、表示されるのはピアノロールで、楽譜ではありません。上に挙げたほかの基礎を学ぶには、レッスンアプリが向いています。
Songscription自体には、こうしたレッスン機能はありません。演奏を採点したり、楽譜の読み方を教えたり、弾き間違いを指摘したりする機能もありません。一から学ぶなら、まずレッスンアプリを使うのがよいでしょう。レッスンアプリは「ピアノを弾けるようになりたい」、Songscriptionは「この曲を弾きたい」という目的に合っています。片方で基礎を学び、もう片方で好きな曲を練習する人も多くいます。併用するレッスンアプリを探しているなら、おすすめのピアノ学習アプリ比較を参考にしてください。Simply Pianoからの乗り換えを考えているなら、Simply Pianoの代わりになるアプリで、乗り換えたい理由ごとに選択肢をまとめています。
Songscriptionが役立つ場面
Songscriptionは、アプリに弾きたい曲がないときに使えます。収録曲ではなく録音から作るので、音声ファイルやリンクがあれば練習用のデータに変換できます。あまり知られていない曲、出たばかりの曲、特定の地域で人気の曲、ライブ音源、自作曲など、決まった曲集には入りにくい音源も使えます。
音源からピアノロールを作り、左右の手の色を確かめながら、再生速度を落として練習できます。ウェブでもモバイルでも使え、楽譜を読んで練習するなら楽譜も書き出せます。MIDIとMusicXMLにも対応しているので、Synthesiaで練習したり、MuseScoreで楽譜を仕上げたりするためのファイルも作れます。
アプリにない曲を練習するには、曲をピアノ用に変換するツールやピアノロール作成ツールに音源を読み込ませます。楽譜が必要なら、音声から楽譜を作るツールを使ってください。
よくある質問
ピアノアプリに弾きたい曲がないのはなぜですか?
レッスンアプリでは、使用の許可を得て収録した曲を使って教えるからです。flowkey、Simply Piano、Skooveには、それぞれ数百曲から数千曲ほどの練習用アレンジが用意されています。練習できるのは、その中の曲だけです。知る人ぞ知る曲、特定の地域で人気の曲、自作曲、特定のカバーやライブ版などは、収録されていなければ練習できません。多くのアプリではサポート経由で曲をリクエストでき、定期的な更新で可能な範囲の曲が追加されます。ただし、希望した曲が追加される保証も、時期の約束もありません。今すぐ弾きたい曲があっても、収録曲から選ぶ仕組みでは対応できないのです。
どのアプリにもない曲は、どうやって練習できますか?
録音から、音に合わせて弾けるピアノロールを作ります。音声ファイルをアップロードするかリンクを貼り付けると、Songscriptionが音符を検出します。音符が上から流れてくるピアノロールで、左右の手は色分けされています。ピッチを変えずに再生速度を落とすこともできます。持ち込んだ音源から直接練習するので、どこかのアプリに収録されている必要はありません。楽譜を読んで練習するなら、PDFで楽譜を書き出すこともできます。
自作曲をSynthesiaで練習するにもMIDIファイルが必要ですか?
はい。Synthesiaは上から流れる音符を表示して再生しますが、録音を聴き取る機能はありません。自分で用意したMIDIファイルやMusicXMLファイルを読み込みます。弾きたい曲のMIDIファイルが出回っていなければ、まずファイルを探すか、購入するか、自分で作る必要があります。自作する場合は、通常、楽譜作成ソフトに音符を入力したり、そこからファイルを書き出したりします。Songscriptionなら、音声から直接、練習用のピアノロールを作れます。Synthesiaや楽譜作成ソフトで使いたい場合は、MIDIやMusicXMLでも書き出せます。
専用のレッスンアプリを選んだほうがよいのは、どんなときですか?
これからピアノを始めて、楽譜の読み方や演奏の基礎を順番に学びたいときです。flowkey、Simply Piano、Skooveは、学ぶ内容を順序立てて、演奏を確認しながら少しずつ難易度を上げていくことを得意としています。Songscriptionは、その学習の代わりにはなりません。得意なのは、持ち込んだ音源から、今弾きたい特定の1曲を練習できるようにすることです。レッスンアプリにない曲にも使えます。両方を併用している人も多くいます。
