チュートリアル採譜Andrew Carlins•読むのに約8分

録音からジャズのソロを耳コピする方法

ジャズの演奏者はソロを耳コピして、フレーズや音使いを身につけます。ただ、耳だけで音を探すと、最初の一音を弾くまでに何時間もかかることがあります。採譜ツールで楽譜の正確な下書きをすばやく作り、それを見ながら耳で聴き取る方法もあります。

録音からジャズのソロを耳コピする様子。耳を鍛えながら楽譜の正確な下書きをすばやく作り、再生速度を落として確認し、仕上げる

この記事は楽器の音を採譜する方法のガイドの一部です。

ジャズのソロを耳コピする方法は二つあります。両方を組み合わせると、それぞれのよさを生かせます。昔からの方法は耳で聴き取ることです。録音の再生速度を落とし、短いフレーズを繰り返し聴き、歌い返してから楽器で音を探します。時間がかかり、もどかしいこともありますが、ジャズの演奏者が音楽の言葉を身につけてきた方法です。

もう一つは採譜ツールで楽譜の正確な下書きを作り、それを見ながら聴き込んで弾く方法です。下書きがあれば、音を一つずつ探す手間を省けます。そのうえで、自分の耳を使って演奏を聴き取ります。

ツールは楽譜の下書きを作るために使います。耳を鍛えるには、自分で演奏を聴き取る作業も必要です。音がはっきり聴こえる単音のソロなら、ツールでほとんどの音のピッチとおおまかなリズムを拾えます。音符を入力する作業の大半はそれで済みますが、スウィングやアーティキュレーション、ゴーストノート、ベンド、強弱は自分の耳で聴いて加えます。

ジャズのソロの楽譜がほとんどない理由

好きなソロの楽譜を探しても、たいてい見つかりません。ジャズのソロは、曲のコードに合わせてその場で即興演奏されるもので、最初から楽譜に書かれていないからです。スタンダード曲のリードシートにはテーマのメロディーとコード進行が載っていますが、その進行に合わせて即興で演奏したコーラスは、その録音と演奏者だけのものです。翌日に同じ曲を演奏すれば、ソロも変わります。

定番のソロの中には採譜され、ソロ集として出版されているものもあります。ただ、実際に学びたい特定の録音の特定のコーラスは、音源にしか残っていないことがほとんどです。録音を聴いて楽譜に書き出し、耳と指で覚える作業は、ジャズの演奏者に欠かせません。録音から音を聴き取る方法全般については、音楽を採譜する方法も参考にしてください。

耳で聴き取る方法と、そのよさ

ジャズは聴いて受け継がれてきた音楽です。演奏者は名手の演奏を聴いてまねることで学んできました。ソロを耳で聴き取ると、音符を書き取るだけでなく、耳やリズム感、音楽の語彙、アーティキュレーションや音色の感覚も同時に鍛えられます。完成した楽譜以上に役立つのは、録音を何時間も聴き込んで身につけた感覚です。少なくとも時には耳だけで聴き取るよう勧める先生が多いのも、聴き方や弾き方が変わっていくからです。

一度に取り組む範囲は短くします。コーラスを丸ごと聴き取ろうとせず、一つのフレーズ、あるいは2〜3拍ずつ進めます。

  • 再生速度を落とす。 ピッチを変えずに再生速度を落とし、一音ずつ聴き取ります。半分の速度ならフレーズの音楽的な流れを保ちながら、それぞれの音を聴く時間が取れます。
  • 短いフレーズを繰り返す。 一つのフレーズをループして聴きます。短く区切ると耳が疲れにくく、間違いも積み重なりにくくなります。
  • 歌い返す。 フレーズを正確に歌えるまで聴きます。歌えるようになると、楽器でも音を探せます。指で弾く前に、耳でフレーズを覚えるための手順です。
  • 楽器で音を探す。 歌ったばかりの音を楽器で探します。リズムも確かめてください。書き留める前に手で叩いたり、手拍子をしたりしてみます。ジャズのフレーズでは、ピッチと同じくらいリズムが演奏の感じを左右します。

最後まで続ければ、ソロをすっかり覚えられます。ただ、時間はかかります。音の詰まったビバップのコーラスでは、一音も弾かないうちに一晩が過ぎることもあります。始めたばかりの頃は、音楽を吸収するよりも、音を探して試行錯誤することに時間を費やしがちです。ツールを使えば、その作業を減らせます。耳だけで聴き取る方法については、音楽を耳コピする方法で詳しく紹介しています。

楽譜の下書きをすばやく作る

採譜ツールに音符の検出と下書きを任せれば、一音ずつ探す代わりに、聴くことや弾くことに時間を使えます。Songscriptionでは、ブラウザ上で音源をアップロードするかリンクを貼り付け、ソロ楽器をリズムセクションから分離します。採譜の結果は楽譜とMIDIで受け取れ、操作できるピアノロールで再生速度を落として確認することもできます。

ソロの採譜で役立つ機能の一つが、楽器の分離です。単音の旋律は自動採譜に最も適した音源です。音が重なるバンドの演奏から先にサックスやトランペットを取り出すと、より明瞭な音をもとに、より正確な下書きを作れます。ソロだけの音源は、バンド全体のミックスより常に採譜に適しています。単音の旋律が音の重なったコードよりも採譜しやすい理由は、単音と複音の採譜で解説しています。リズムセクション全体も楽譜にしたいときは、ジャズコンボの録音を採譜する方法を参照してください。

もう一つは、再生速度を落とせるピアノロールです。下書きができたら、元の録音と聴き比べながら半分の速度で再生し、流れていく音符を目で追います。一音ずつ探し直さなくても、ツールが拾えなかったところをすばやく見つけられます。ピッチを下げずに再生速度を落とす方法は、耳で聴き取るときにも使えます。詳しくはピッチを変えずに再生速度を落とす方法を参照してください。下書きを確認したら、書き出す前に間違った音符をブラウザ上で編集できます。

あとから耳で聴いて直すところ

音がはっきり聴こえる単音のソロなら、ツールはピッチとおおまかなリズムを捉えます。一方、ジャズらしい演奏のニュアンスは自分の耳で聴いて加えます。

  • スウィングの感じ。 楽譜では均等に見える8分音符も、均等には演奏しません。下書きでは読みやすいリズムにクオンタイズされるので、スウィングは自分で加えます。
  • アーティキュレーション。 タンギングするかスラーでつなぐか、強く弾くか柔らかく弾くか、フレーズのどこをつなぎ、どこで切るか。こうしたフレーズの弾き方は、ピッチの検出では分かりません。
  • ゴーストノート。 はっきり音程が出ないほど小さく演奏され、フレーズにリズムの歯切れを加える音です。正確に拾われないことが多いので、耳で聴いて書き加えます。
  • ベンド、スクープ、フォール。 管楽器やギターでピッチを滑らかに変えると、下書きでは普通の音符になることがあります。自分で記号を書き加えます。
  • 強弱記号。 フレーズの中で強く演奏するところや、音を膨らませたり弱めたりするところを示します。音符だけでは分からないので、録音を聴いて書き加えます。

ツールがピッチとリズムを機械的に採譜し、演奏のニュアンスは耳で聴き取ります。音符をすばやく書き出せれば、その分、ニュアンスを聴く時間を増やせます。ソロによって採譜の精度が変わる理由は、AI採譜の精度が変わる理由で解説しています。

二つの方法を組み合わせる手順

まずSongscriptionに録音をアップロードするかリンクを貼り付け、ソロ楽器を分離して下書きを作ります。ピアノロールを開き、再生速度を落として元の録音と聴き比べます。ピッチを確かめ、明らかに間違っているところをブラウザ上で直してください。耳だけで一音ずつ探すよりも、ずっと短い時間で正確な骨組みができます。

次に、短いフレーズを繰り返し聴き、歌い、楽器で弾いて手になじませます。その間にスウィングやアーティキュレーション、ゴーストノート、強弱を下書きに書き加えます。時間のかかる音探しを省きながら、ソロを耳で覚える作業は続けられます。

納得できる形になったら書き出します。楽譜を読むならPDF、楽譜作成ソフトに取り込むならMIDIかMusicXML、ギターを弾くならGuitar Proのタブ譜を選べます。形式の選び方は音楽の書き出し形式を参照してください。

下書きを作ってから聴いて仕上げる方法は、ほかの即興演奏にも使えます。ギターソロの耳コピでは、フレットボード上の音の位置を確かめながら進める手順を紹介しています。ソロの単音の旋律ではなく、その後ろで弾かれる伴奏を聴き取りたいときは、ジャズピアノのコードを採譜する方法を参照してください。音源から楽譜を作成のページから、ソロを分離して下書きを作れます。

よくある質問

ジャズのソロに耳コピのツールを使うのはずるいことですか?

楽譜の下書きを作るために使い、聴く作業を省かなければ、ずるいことではありません。耳コピでは、録音を何度も聴き、フレーズの弾き方や音の選び方を聴き取って歌い返すことで力がつきます。ツールはその作業の代わりにはなりません。ピッチを一つずつ探る作業は時間がかかり、間違いも起きやすいので、そこをツールに任せれば、耳を鍛える時間を取れます。下書きができたら、ソロをじっくり聴き込んでください。

ジャズのソロを自動採譜すると、どのくらい正確ですか?

音がはっきり聴こえる単音のソロで最も精度が上がります。一度に一音だけ鳴る音源は自動採譜に最も適しており、ピッチもより正確に拾えます。ほとんどの音とおおまかなリズムは捉えられますが、スウィングやアーティキュレーション、ゴーストノート、ベンド、スクープ、強弱といった演奏のニュアンスまでは捉えられません。こうしたニュアンスはあとから耳で聴いて加えます。下書きは完成した楽譜ではなく、出発点です。

ジャズのソロの楽譜がほとんど見つからないのはなぜですか?

録音されたソロはその場で即興演奏されたものなので、もともと楽譜に書かれていません。曲のリードシートにはメロディーとコードが載っていますが、そのコードに合わせて即興で弾いたコーラスは、その録音と演奏者だけのものです。有名なソロの中には採譜されてソロ集に載っているものもありますが、学びたい演奏の大半は音源にしか残っていません。そのため、耳コピが必要になります。

Songscriptionでバンド全体の音源から一つの楽器を採譜できますか?

はい。バンド全体の音源から一つの楽器を分離できるので、サックスやトランペットのソロをリズムセクションから取り出し、その旋律だけを採譜できます。ほかのパートから分離したソロは自動採譜に適した音源です。バンド全体を一度に採譜するよりも正確な結果が得られます。採譜の結果は楽譜とMIDIで受け取れ、再生速度を落として確認できるピアノロールも使えます。

著者について

Andrew Carlins

著者

Andrew Carlins

Songscription共同創業者・CEO

アンドリューは、弾きたい曲の楽譜が見つからないことにうんざりしていた音楽仲間数人と、スタンフォード大学でSongscriptionを共同創業しました。子どもの頃からピアノとバリトンサクソフォンを演奏し、ミュージカルの舞台にも立っていました。もう何年も舞台には立っていませんが、今も腕は鈍っていないつもりです。録音から音を拾って楽譜にすることについて書いています。

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